暖かい日々の桜
咲き続ける桜
桜桜桜
堪能するといってよいほど毎日見続けて
ある晩を境に
強い雨の桜となり
豪雨の桜となり
肌寒い夕闇の桜となった
死を思わせる道の濡れ
死の近づくのを感じさせる信号の明かりの滲み
あゝ、みんな死んでいってしまう
もう誰もわたしを覚えていない時代が来ている
雨は霊のからだに染み込んでくるかのようで
わたしだけいつまでも死なないのがはっきりしてくるようだった
雨に打たれて落ちる桜もあれば
雨に打たれて落ちない桜もあるのだ
きっとあらゆる雨粒に当たらないでみずから散る桜もあろう
桜桜桜
三文字だけでいいか?
いいのか?
きっと散ることのない桜も世界のどこかにはあるだろう
もう何千年も何万年も咲き続けている桜
咲き続けているのに人間の目などには見えることのない桜
桜桜桜
呆けたように人々が桜を見てまわるのは正しいのだと気づいた
桜の下や近くで酒を飲んだり飲まなかったりして騒ぐのも正しい
大宇宙の中で正しい行為とはじつはそれらだったとはじめて気づく
みんな死んでいってしまうのだ
なんと正しいことだろう、みんな死んでいってしまうのは
桜桜桜
三文字でいいのだ
三文字で表せない永遠などない
死んでいってしまった人たちがわたしを知っていた
生きている人たちはわたしを知らない
わたしはわたしを知っているよ
よぉく知っているよ
汝自身を知れなどという問いの先にあるわたしではないのだ
わたしのよく知っているわたしは
わたしの知っているべきわたしは
死んでいってしまった人たちが知っていたわたし
死んでいってしまった人たちが知っていたわたしはわたしにせつない
せつないものだけが大切ね
せつないものにどれだけ到ったか
もっともっと到るか
もっともっと到っていこうね
もっともっと
ね
ね
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