2019年11月10日日曜日

からさら



ふるさとのように
ほのか
甘い菓子をひと箱もらって帰る
ふるさとからあまりに遠い
大都市の運河沿いの
小径
から数本
入った
小径
からさらに入った
小さな家
なので
からさら
と名づけている
秘密めいた
唯一の
居どころに
帰りついたものの
わざと明かりを灯さずにそっと靴を脱いで
玄関から上がり
じぶんの居どころ
だというのに
泥棒かなにかのように
亡霊かなにかのように
音も立てず
そぶりも感じとられないように
ひっそりと
闇の廊下を進んで
いき始めた
まゝ
ずっと
進み続けている
ずっと




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