跳ねた
ヒイラギの
鰓から37階建てのタワーマンションまで伸びた愛が
きらきらひわひわりわりわ
買うべきだった帽子が宙に
ひょいと
浮いている
海6号 徳利 じゅうぶんに菜の花
食べなかった春 過ぎゆく
過ぎゆく
バスがあるのに歩いて駅まで行くことにしたものです。
ものでした。
モウ、何十年ニ、ナリマス、カ? ナリマス、カ?
小さな真四角の墓地が
川沿いにあった
そこでは毎春菜の花がきれいに咲いて
あまり丈高くはないのだけれど
それだからこそ風に折られることもなしに
きれいに咲いて
咲いて、ねえ
よく知らない
でも
毎日のように顔を見たお婆さんが
菜の花のところから手招きしたことがあった
(今、37階建てのタワーマンションの近くの
古い平屋に住んでいる僕、 の、幼、か、っ、た、頃、に
幼かった頃の、僕に
手招き……
きらきらひわひわりわりわ
きらきらひわひわりわりわ
(モウ、オ婆サン、死ンデイタンジャ、ナイカシラ?……)
いや、いや、……
お婆さんの目から僕が見えているから死んでいないと思う
僕の目からお婆さんが見えていなかったから僕が死んでいたんだと
幼かったのに
ねえ
死んで幼かった僕の
あれは
墓のある墓地だったの?
きらきらひわひわりわりわ
きらきらひわひわりわりわ
そうよ、
きっと、
そうよ、……
買うべきだった帽子が宙に
ひょいと
浮いている
バスがあるのに歩いて駅まで行くことにしたものです。
ものでした。
モウ、何十年ニ、ナリマス、カ? ナリマス、カ?
ナリマス、カ?
ひとつ格別に美しい深い色合いの星雲が要る!
ここには要る!
37階建てのタワーマンションの近くの
古い平屋に住んでいる
だけでは
いけませんから!
いけませんから!
きらきらひわひわりわりわ
昼でも
強い陽光の下でも
見ます!
ひとつ格別に美しい深い色合いの星雲!
きらきらひわひわりわりわ
僕が死んでいたんだと思うにしても
お婆さんと菜の花が重なって
手招きしていたのは
菜の花だったかもしれない
お婆さんが
菜の花だったかもしれない
ナリマス、カ?
いけませんから!
現在という
なんという
大嵐でしょう!
僕、心細くって、
きらきらひわひわりわりわ
りわりわ
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