2024年4月29日月曜日

ろくに読みもしない見栄っぱり


 

 

何はともあれ本を買え

         アーノルド・ベネット 『文学趣味』

 

 

 

 

興味本位で本をたくさん買うのに

ろくに

読みもしない見栄っぱり

 

という人種がいて

わたくしもその末席を汚し続けておるわけだが

そういうバカにも

存外

大きな存在価値がある

古書店に行くたびに思うのである

 

古本を買うとなれば

なるべく

きれいな状態の本を買いたい

やはり

思う

 

よく読んであって

線が引いてあり

囲んであったり

メモがあったりするのを見ると

かつての所有者は

しっかり読んでいてたいしたものだ

と感心するものの

いざ自分がこの本を買うかどうか

となると

ろくに読みもしないで

ほぼ真っさらな状態のままに置かれた

読書家のふりをするばかりだった

怠けものの所有者が所蔵していたほうを

やはり

選んでしまうことになる

 

これぞ

興味本位で本をたくさん買うのに

ろくに

読みもしない見栄っぱり

の効用

とでもいうべきものであって

まさに

こういう人士がたくさんいてくれるおかげで

古書市場は

一定の清潔感を保っている

と言えよう

 

書籍的浪費家や

読書的見栄っぱりあっての

古書文化

というものではないか

 


 

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