2019年9月28日土曜日

エノコログサの穂




上野駅の常磐線ホームの
後端というのか
他より空いているはずなので
最後尾の車両に乗ろうと
端っこのほうで待っていた

近い線路と
むこうの線路とのあいだに
ちょっとした園のように秋草が茂って
ことに
エノコログサが
まだ若い
きれいな穂をつけて
何本も
何本も
風に揺れている

昼間なので
陽はちょっと暑いくらいに射して
いい
眺めだ

エノコログサの穂というのは
なんというか
ちょうどいいかたちで
幸せだった子ども時代を
象徴してくれているように見える

ほんとうに幸せだったにしろ
そうではなかったにしろ
それほどでもなかったにしろ
エノコログサを見ていると
やはり
幸せというものはあったかのような
気にさせてくれる

何本も
何本も
風に揺れている

列車が
なかなか来ないのも
いい

何本も
何本も
風に揺れている




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