若気の至り
というが
若気がずいぶん至っていた頃
画家や
彫刻家や
カメラマンや
舞踏家や
ダンサーや
そうして
詩人や
歌人や
俳人や
くわえて
ライターや
コピーライターや
編集者や
コーディネーターや
わけのわからない中継ぎ業者や
などなどと
つぎつぎ知りあいになって
営業の仕事でもないのに
週に100枚の名刺交換でも足りないほどだった
ひっきりなしに
発表会や
個展や
朗読会や
ひっきりなしに
飲み会や
打ち上げや
パーティーや
クリスマスパーティーや
忘年会や
新年会や
ひっきりなしに
送られてくる
詩集
歌集
句集
写真集
インヴィテーション
ちょっとしたプレゼント
お中元
お歳暮
バレンタインのチョコレート
あまりに数が多くなりすぎて
ある頃から
会にはあまり行かなくなり
朝までの飲み会にもつき合わなくなった
それでも
十年以上は
インヴィテーションは届き続け
詩集もプレゼントも届き続け
ちょっと美人のダンサーなんかには
ちょっと野性味ある女性カメラマンなんかには
会い続け
もちろん朝帰り
それでも
二十年も経つと
インヴィテーションも来なくなり
詩集も来なくなり
ちょっと美人のダンサーはスキルス性のガンで急死し
ちょっと野性味のある女性カメラマンは田舎に帰って老父の介護
いつのまにか
メールさえ返ってこなくなり
いまでは
ちょっとネットで検索しても
だれひとり
活動を続けておらず
だれひとり
名前も挙がってこないのだ
たぶん
三〇〇人は超えていた
あの人たち
すっかり消滅して
たったのひとりさえ
残っていない
だれひとり
令和へは生きのびていけなかった
ぼくの友だちたち
ぼくの知りあいたち
ぼくのゲージツカたち
ぼくのクリエーターたち
アーメン
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