2024年11月26日火曜日

風の街


 

 

嫌いでもないが

寺尾聰は

そう好きでもない

 

似合わない

サングラスをかけた顔が

かっこ悪かったし

髪の毛も

関の弥太ッぺみたいで

ビミョーだった

 

声も

歌いかたも

そう好きでもない

 

けれど

「ルビーの指輪」で

冒頭から

叩きつけてくる

 

くもり硝子のむこうは

風の街

 

というのは

決定打だと感じる

 

くもり硝子のむこうに

風の街

なんて呼びたい街があったら

ちょっと

いいな

と思ってしまう

 

けれど

もっといいのは

 

あれは八月

まばゆい陽のなかで

誓った

愛の

まぼろし

 

というところ

 

このイメージの後だと

「孤独が好きなおれさ」

なんていう

通俗の極みの

陳腐な

ことばも

ぴったり嵌まってくる

 

だれが書いた歌詞かな?

と思うと

やはり

松本隆なのだ

 

背中をまるめながら

指のリング

抜きとったね

おれに返すつもりならば

捨ててくれ

 

というような

ことは

わたしにもあった

 

「捨ててくれ」

とは

言わず

きみの娘が

ちょっと大きくなったら

はじめての

リングの練習として

あげたらいい

というようなことを

言った

 

そのように

した

らしい

 

他の男とのあいだに生まれた

娘の指に

リングは嵌められた

はずだ

 

娘も

夫も知らない

リングの物語を

彼女と

わたしは

知っている



 

 

 

https://www.youtube.com/watch?v=yuhh2l8m6_Y

 

 




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