書くことと
書かないことは
おなじ
まったく
おなじ
そんなことはない
書くことと
書かないことは
ちがう
まったく
ちがう
と
言うひとたちが
書くことの好きなひとたちや
書く仕事をしているひとたちのなかに
いっぱい
いるだろう
考えはいろいろでいい
が
そうね
五千年ぐらいしてから
書くことの有意義さを唱えたひとたちの
なにが残っているか
確認してみてから
ほんとうに検討することにしよう
最優位に考えるべきは
与えられた時間というエネルギー残量
事細かに
二時間ぐらいかけて
昨日のことを日記に記すのって
その二時間をほかのことに使うのと比べ
大きな価値ありますか?
日本を支配している超巨大帝国の統領が
変わるからといって
今後の国際政治や国際経済への影響を細かく予想して
レポートにするのって
それにかかる数日という時間をほかのことに使うのに比べ
大きな価値ありますか?
こちらの気持ちや意図を
どうやら誤解しているらしい知人に
くだくだ
わかりやすく真意を説明して書き送るのに使う時間や
労力って
ほかのことに時間や労力を使うことに比べて
大きな価値ありますか?
二時間でも
一日でも
数日でも
書いて時間を失っていくより
街の音をぼんやり聞いたり
空気の流れや寒暖の変化を感じながら
静かに座っていたり
思い出と思いつきとちょっとの考えの進展などを
意識のなかに生じさせたりしているほうが
はるかによい
ぜんぜんよい
書くのが大事だなんて
言っているひとたちの言葉は
どうせ
五千年後には
なにも残っていないでしょう
いや
残っていなくても
五千年前のある社会のなかでは
大事なことだったんだ
と言うかもしれないけれど
五千年後に残っていない社会って
大事だったんでしょうか?
溶岩に埋もれてしまう直前のポンペイのだれかさんが
時間をかけて必死につけていた貸借帳簿
大事だったんでしょうか?
そういうおまえも
いろいろ
書いているじゃないか
と言われるかもしれませんが
どれほど
書くことに価値がないか
それを一文字一文字確かめるために
書いているのです
書くことだけでなく
読むことも
なにかを作ることも
しゃべることも
ひとに会うことも
考えることも
感じることも
からだを維持することも
心を調整することも
呼吸することさえ
休むことさえ
ああ
くだらない
と
ほんとうに思っているのです
人間というものがふつうにやっている
それらに
どれほど価値がなくて
結局つまらないものなのか
知り尽くすために
やっています
すべて
すべて
すべて
ほんとうに
なにもかも
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