仕事に出ない日中だった
片づけ事をおおかた仕終えると
急に眠くなり
ひろびろと畳に横になった
病気がちの女友だちに
このところ
あれこれとやってあげて
忙しかったなあと思いながら
メールを見ていると
そのひとから
フラメンコ・ディナーへの
招待が来ていた
OOOO円ぐらい
ともあって
なあんだ
自分の分は払ってネという
べつにかまわない
いっしょに
スペイン料理を食べに行けるくらい
回復したのがうれしく
治って本当によかったな
と思いながら
返信をしようとした
…と
急に水の底から
浮き上がってくるように
目が覚めていった
メールをくれた女友だちは
もう二十年ほど前
職場を移ったのを機に
音信の絶えてしまったひとで
故郷で見合いをするとか
しないとか
病気もなかなか治らないとか
そんな電話話をしたのが
最後だった
職場の同期で
ユーモアのある美人だったが
忙しい仕事の合間合間
いつも兄妹のようにしゃべって
恋に進むような間柄ではなかった
明るいひとなのに
面倒な病気があって
月に一二回は大病院に通っていた
もうすっかり忘れていたのに
夢の中であっても
フラメンコ・ディナーなんかに
誘ってきたりして
…と
畳に寝ころびながら
ぼんやり思っているうち
なにか大事なものが
心にひさしぶりに
流れ込んだように感じ
あたたかさが
気持ちの中にあった
死んだかもしれないなあ
あのひと…
そう思ったが
わびしい感じはしなかった
ひさしぶりに
つい今しがたまで
気持ちに受けていた
あたたかさが
時の経過であろうと
ながい不通であろうと
死であろうと
すべてを
やわらかいものに変えていた
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