八月二十三日
草はらに囲まれ居れば虫の音は宇宙音のごとし夏の豊饒
詩歌とは彷徨にしてみづからの顔失ひて行くひとり旅
茫然自失して立つ時の姿見て人は捉へよ「八日目の蝉」
モーツアルト協奏曲第20番 遠くさびしき冬の旅空
森進一の嗄れ声聴きたき昼なりしがルチア•ポップの「ルイーズ」掛ける
端的に言はば軟体動物のふにやふにやが棲むキモワルイ国
ネイガウス父子のモーツアルト録音なかりしか 田部京子聴きつつ思ひは遊ぶ
畏友宮下誠と聴き競ひし頃ピノックもクイケンも誰も過激なりしよ
マルカム•ロウリィ「火山の下で」を死の床のミシェル•フーコー愛読せしてふ
夏の朝は四時半ばには蝉の声すでに激しよ特にミンミン
発砲は自由シリア軍の服装の集団からとの報も飛び交ふ
ダイアナの息子の裸凡庸にして思ひ直す衣服のちから
日ざかりの居間より空と木々見つつ選びはじめる晩餐の服
三時間ほどの眠りで我はよし洩らさず夏の暑さも生きる
人づきあひ型に囚はれぎくしやくと自我にほふ人もあはれなるかな
八月二十四日
乳牛の扱ひさへもひど過ぎて避けられまいよ人心荒廃
自由シリア軍に武器はどこから来てゐるか報道視点も世界世論も
自由シリア軍ゲリラ組織にも拘らず報道それにばかり付き添ふ
軍事的介入といふ商機狙ふ力蠢くシリア、日韓
みづからの爾後のいのちを値踏みして諦めもして選ぶ生命保険
八月二十五日
酒乱の父たびたび留置場に引き取りに行きしよ小中学生頃から母と
ヒステリーひどき母ゆゑ包丁を子の首に当つるも日常なりき
父母とドライブ行けばいつもいつも心中すべきかと語りあふ崖
こんな男におまへはなるなと母わめく家で酒乱の父がまた吐く
父の家を母は罵り我に言ひき 見タカイ、卑シイアノ人タチヲ
母の父の火葬のさなかまた父は酔ひて暴れて祖父罵りき
受験控えし深夜にも父は泥酔しオ前ナド落チテ死ネと吾に言ふ
はたちにて出奔せしよ爾後は家も家族も持たず師友も持たず
母方は幕臣なれば薩長の靖国神社はわが血には敵
ほんたうのことを言はうかほんたうのことをいつぱい抱へているぞ
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