2023年12月2日土曜日

歌謡曲を聴くのは

 


 

歌謡曲を聴くのは

好き

 

歌謡曲を聴くの「が」

好き

ではなく

歌謡曲を聴くの「は」

好き

 

特に

古い歌謡曲

 

ポップスなどとは

まだ

呼ばれていなかった頃の

ものが

 

それらが流行っていた頃に

浸るように

など

聴いたわけではない

 

歌謡曲にうつつを抜かすことなど

馬鹿にされていた頃だし

聴くともなしに

なんとなしに

聴くのが

たしなみだった頃

 

もちろん

ずいぶん入れ込んで

聴く者もいたが

「馬鹿だね、歌謡曲なんか聴いてて」

と親たちや

近所のオバサンなどには

言われた頃

 

長い時間が経って

いま頃になって聴くと

沁みる

あの曲も

この曲も

どの曲も

 

どの曲も

かならず

なにかの出来事や

親しかったひとたちや

嫌だったひとたちの姿のうしろに

BGMとして流れている

 

ハッとして

グッときて

パッと目覚める

恋だから

フッとした

瞬間の

きみは天使さ*

 

などと

田原俊彦の

若い頃の声を聴くと

それまでの歌手たちのレベルのなかでは

驚くほど

歌は下手だったし

中高生ばかりに人気が出ていて

とりあえずであれ

成人している者には

もう馴染めない歌だな

と思いながら

商店街などから流れてくるのを

聴くというより

耳に受けとめていた

 

けれど

この曲が流れていた頃の

あれこれの出来事や

親しかったひとたちや

嫌だったひとたちの姿が

いまになると

この曲をテーマ曲にしたかのように

浮かんでは消え

浮かんでは消えるので

もう

田原俊彦の歌の下手くそさなど

どうでも

よくなってしまう

 

YouTubeという

便利で危険で貴重で不思議で不気味な

小規模な模造版アカシックレコードのような装置で

ひとしきり

『ハッとして!Good』を聴いてみていると

なぜだか

横や下に並ぶ他の動画のなかに

キャンディーズの『年下の男の子』**があり

ああ

これが流行った時も

ファンたちがちょっと異様なオタク青少年ばかりで

なんだか参っちゃったなあ

と思ったことを

思い出し

クリックしてみる

 

いろいろなヴァージョンが見つかって

昔むかしを蘇らせながら

あれやこれやと聞き比べてみていると

ドレッシーな衣装の時より

黄色や赤のミニスカートドレスの時のほうが

格段に乗りがいい

さらにいえば

てのひらをピストルのようにして

指を上に上げるところで

バックの伴奏音楽が

軋むような音を出してくれると

さらに味が増すのだが

そういう演奏は意外と少なかったのも

わかる

 

歌っている伊藤蘭の

娘の趣里が

いまは

連続テレビ小説の主役を演じたりするように

なっていて

右横で歌っていた

スーちゃんこと

田中好子は

映画『黒い雨』で

見事な演技をしたのだったよなあ

と思い出し

乳ガンで彼女が55歳で亡くなる際には

元キャンディーズの盟友として

伊藤蘭も藤村美樹も

親族とともに

亡くなるまで7時間も

病室で付き添ったそうだな

とも

思い出す

 

 


 

*『ハッとして!Good』(宮下智作詞・作曲)

https://www.youtube.com/watch?v=7xWpHG9PTp0

**『年下の男の子』(千家和也作詞、穂口雄右作曲)

https://www.youtube.com/watch?v=mcQnH8-EkoA

https://www.youtube.com/watch?v=7TkDjPdwdbA






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