世の中への興味も薄れちゃったよ
紗ほどに
うすぎぬほどに
うすく
うすく
ね
と詩をはじめるなんて
やっぱり
陸游*はいけてるな
と
思い出し
そうだ
ちょっと訳しておこう
なんて
思いついちゃって
*
臨安で春雨がはじめて晴れたよ
陸游
この何年かで
世の中への興味も薄れちゃったよ
紗ほどに
うすぎぬほどに
うすく
うすく
ね
なのに
誰にだかわからないけれど
呼び出されて
馬になんか乗ってきて
花の都で
お上りさん
小さな二階屋で
ひと夜
春の雨を聴いたかと思えば
翌朝には
路地の奥で
杏の花を売る声を
聞いているよ
短い紙きれに
ちゃんと行も揃えずに
草書してみたり
晴れた窓辺で
まねごとながら
なんとか
きれいに泡を立てようと
茶を点ててみたり
着ている白い着物が
都の塵に汚れちゃうんじゃないか
などと嘆く必要は
まあ
あるまい
清明節の頃までには
きっと
家に帰ることが
できているだろうから
*
臨安春雨初霽 陸游
世味年來薄似紗
誰令騎馬客京華
小樓一夜聽春雨
深巷明朝賣杏花
矮紙斜行閑作草
晴窗細乳戲分茶
素衣莫起風塵歎
猶及清明可到家
*
臨安にて春雨初めて霽る 陸游
世味 年來 紗よりも 薄し
誰か馬に騎して京華に客たらしむ
小樓 一夜 春雨を聽き
深巷 明朝 杏花を賣る
矮紙 斜行 閑に草を作し
晴窗 細乳 戲れに茶を分かつ
素衣 風塵の歎を起こすことなかれ
猶ほ清明に及んで家に到るべければ
*陸游(1125-1210) 南宋の代表的詩人。范成大、尤袤、楊万里とともに南宋四大家の一
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