I am determined to prove a villain
And hate the idle pleasures of these days.
William Shakespeare 《Richard III》
♪空ときみとのあいだには
今日もつめたい雨が降る
きみが笑ってくれるなら
ぼくは悪にでもなる
中島みゆきの
「空と君のあいだに」の
この歌詞を思い出しながら
イスラエルによるガザ虐殺のニュースを
あとから
あとから
見続けている
今回の虐殺を生き残るパレスチナ人たちに
この歌詞は
フランス国歌「ラ・マルセイエーズ」なみの力を持ち得るだろう
♪さあ、祖国の子らよ、栄光の日は来た!
我らに対し、血にまみれた横暴な旗が掲げられた
聞こえるか、戦場の野蛮な兵士たちの唸り声が?
奴らは君たちの腕の中まで来て
君たちの息子や妻を殺す気だ
武器をとれ、同志たちよ
隊伍を組め
進もう、進もう!
汚れた血が、我らの畑を濡らすまで!
「空と君のあいだに」も
もう
古い歌だ
1994年5月からの
日本テレビ系のドラマ『家なき子』で
主題歌として流れた
名脚本家・野島伸司が書いた
「同情するなら金をくれ!」
というセリフが
まさに一世を風靡した
新語・流行語大賞にもなった
安達祐実が演じた
主人公の小学6年生相沢すずは
1982年生まれの設定
バブルの狂騒の続く時代のなかでも
この子の家庭は貧しく
継父からは家庭内暴力や児童虐待を受け
病身の母だけを愛して
盗みを働いたり
継父を殺そうと計画したりする
貧しさゆえに食べ物を拾おうとしたこの子に大人たちが同情する時
「同情するなら金をくれ!」
とこの子は吐くのだ
このテレビドラマを見た
当時の視聴者は
飽食のバブルの時代のなかでの
特異例としての
ひとりの貧乏な女の子の話と受けとめたかもしれない
しかし
この時点で
すでに
バブルは崩壊して
日本は景気後退期に入っていた
雰囲気としてだけ
バブルの神話があたかも健在であるかのように
濃厚に漂い続けていた
バブル期の象徴のように見られるジュリアナ東京は
1991年5月から1994年8月までの営業なので
ドラマ『家なき子』も
まさにバブルの狂騒の時代に放映されたかのように見えるが
じつはジュリアナ東京は
バブル崩壊後に営業を始めた
富裕層ならぬ
バブルを夢見続ける浮遊層を誘因して
可視化する装置だった
『千と千尋の神隠し』の湯屋のようなものだった
『家なき子』が放映された1994年は
イスラエルとPLOのあいだの暫定自治協定によって
パレスチナのヨルダン川西岸とガザ地区で
自治政府が成立した年でもある
1993年のパレスチナ暫定自治協定にもとづき
ガザ地区とヨルダン川西岸のイェリコ地区で
暫定的自治が開始された
この自治政府は
パレスチナ暫定自治行政府
(Palestinian Interim Self-Government Authority)といい
略称はPAで
実体はパレスチナ解放機構PLOが構成していた
PLO議長のアラファトが行政府長官を務めることになったが
2004年の彼の死後
アッバスが2005年の選挙で選ばれて就任した
国会にあたるパレスチナ立法評議会の議員たちも選挙で選ばれるが
2006年の選挙で
イスラム原理主義組織のハマスが過半数の議席を獲得し
ハマス主導の内閣が発足した
この時からPLO穏健派と急進派のハマスの対立が始まり
2007年6月にハマス武装勢力がガザ地区を掌握し
アッバス大統領(PLO議長)が緊急事態を宣言することになった
2023年のガザ虐殺の起こっている時点で
「空と君のあいだに」や
『家なき子』のセリフ
「同情するなら金をくれ!」などを思い出しながら
これらがじつは
バブル崩壊をこそ象徴していたのだと認識し直してみる時
第二次大戦後に起こった平和幻想バブルや
自由主義幻想バブル
民主主義幻想バブルが崩壊していく時期に
いま
居合わせているのだ
と感じる
♪空ときみとのあいだには
今日もつめたい雨が降る
きみが笑ってくれるなら
ぼくは悪にでもなる
と
世界中のあちこちで
心やさしき人びとが
じぶんにとっての「きみ」に向かって
歌う時代に入る
じぶんにとっての「きみ」のために
「きみ」を脅かす他者たちにとっての「きみ」を殺戮する時代に
入る
「きみが笑ってくれるなら」
他者たちにとっての「きみ」を消滅させる時代に
大きく
なだれ込んでいく
悪は愛
汚いはきれい
残虐はやさしさ
くりかえされてきた
古い話だ
リチャード三世も
言っていた
「おれは悪党になってやる!」
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