Donc, si vous me croyez, mignonne,
Tandis que vostre âge fleuronne
En sa plus verte nouveauté,
Cueillez, cueillez vostre jeunesse :
Comme à ceste fleur la vieillesse
Fera ternir vostre beauté.
Pierre de RONSARD Mignonne, allons voir si la rose
クリスマスで
もっとも忘れがたいのは
1995年のもの
エレーヌ・セシル・グルナックの故郷
フランスのロゼーヌ県のサン=シェリー・ダプシェの
エレーヌの妹マリ=テレーズの夫婦の家で
10人が集まってのクリスマス
パリから来た
エレーヌの姉アンリエットは
一族のなかではいちばん料理がうまいと知られていて
マリ=テレーズと
その娘サンドラが手伝うかたちでつくり
前菜のあとに
メインディッシュが三皿も続くような
豪勢なクリスマスディナーができあがった
夜遅くなってか食べはじめたものだから
ひととおり食べ終えるだけでも
深夜の2時ごろまでかかる
そのあとも
デザートが続くので
3時半ごろに
ようやく食べ終えることになった
いろいろな料理があったのに
不思議なもので
というか
情けないことに
というか
不甲斐ないことに
というか
アンリエットの夫のピエールとぼくがいっしょになって
午後に精を出して殻を開けた生ガキや
腹のなかに栗を詰めて焼いたウズラのことしか
覚えていないのだ
クリスマスディナーを
夜遅くなってから食べはじめたのは
その前に
教会での夜のクリスマスミサに出かけたからだ
標高935mから1126mのサン=シェリー・ダプシェは
クリスマスの時期ともなると寒い
日が暮れてから外に出ると
歯ががちがちと鳴るほどに震えが来る
夜のミサに出かけるのに
スキー用の分厚いダウンを貸してもらって
それを着ていった
クリスマスとはいえ
ミサなどというものは
そう面白いものではないし
記憶に残るものでもない
けれども
教会でのその夜のミサでは
一生忘れられないほど印象深いものになった
日本人のぼくが
フランス人たちのなかで
妙に目立ってしまったのだ
というのも
この年
1995年の1月17日に起こった
阪神淡路大震災の衝撃は
フランスのチベットとも呼ばれる
中央山塊のなかのど田舎のサン=シェリー・
教会の神父が
1月に起こった大震災の犠牲者に
あらためて
クリスマスの今夜も祈りを捧げましょう
非常に稀なことに
今夜
当教会には日本人がひとり来てくれてもいます
などと言ったものだから
教会のなかにいたひとたち皆が
ぼくのほうを見て
それから
手を合わせて
祈りを捧げてくれたものだった
1995年12月24日のクリスマスイヴの夜
日本から遠く離れた
まったく縁のないような
フランスのど田舎のサン=シェリー・ダプシェの教会で
短い時間ながら
フランス人たちが
日本の阪神淡路大震災のために祈ってくれたということを
あれから28年も経て
こんなところに
ちょっと書き止めておいてもいいだろう
あの教会に集った主だった大人たちが
もうすっかり死に絶え
あるいは
すっかり老いさらばえた
いまになって
28年もむかし
あんなこともあったのだと
記しておいてみても
いいだろう
そうして
ついでに
ついでに
「じきに来る老年」を嘆く
ロンサールのあのバラの詩を
カッサンドルへのオードを
添えておいても
いいだろう
カッサンドルへのオード
ピエール・ド・ロンサール
恋人よ、みにゆこう、
けさ、あけぼのの陽をうけて
紅の衣をといた、ばらの花
今宵いま、赤い衣のその襞も
あなたににた色つやも
色おとろえていないかと。
ああ、ごらん恋人よ、
何とはかない、バラの花
大地にむくろをさらすとは!
おおつれない自然
この花のいのちさえ、
あしたから、ゆうべとは。
だから恋人よ、
ぼくのことばを信じるならば、
水々し、花の盛りのその齢に
摘め、摘め、あなたの若さを、
この花ににて、じきにくる老年に
あなたの美しさも褪せるのだから。
(窪田般弥・高田勇訳)
Mignonne, allons voir si la rose
Pierre de Ronsard
Mignonne, allons voir si la rose
Qui ce matin avoit desclose
Sa robe de pourpre au Soleil,
A point perdu ceste vesprée
Les plis de sa robe pourprée,
Et son teint au vostre pareil.
Las ! voyez comme en peu d'espace,
Mignonne, elle a dessus la place
Las ! las ses beautez laissé cheoir !
Ô vrayment marastre Nature,
Puis qu'une telle fleur ne dure
Que du matin jusques au soir !
Donc, si vous me croyez, mignonne,
Tandis que vostre âge fleuronne
En sa plus verte nouveauté,
Cueillez, cueillez vostre jeunesse :
Comme à ceste fleur la vieillesse
Fera ternir vostre beauté.
https://www.youtube.com/watch?
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