夢からサッと目覚めて
こちらの世界に戻ってくる時もあるが
なかなか覚めず
というより
覚めるというのとは違う感じで
川の水が海に流れ込んでいく時のように
夢界とこちら界が混ざりあい
だんだんとこちら界の水の量が増えていくようなぐあいに
意識のありようが変わっていく
ということも
多い
今朝なども
そんなふうだったが
なにしろ
内容が大変だった
昔の詩人・歌人・童謡作者の
あの北原白秋が
晩年
じつは最先端のコンピューターを開発していて
その性能たるや
現代のコンピューターの能力をはるかに凌駕していた
という話題で
夢界では大騒ぎになっていたからだ
しかも
白秋はそのコンピューターを使って
宇宙人と密に通信をしていて
人類の創生の秘密や
宇宙の未来のことまで
多岐にわたって調べていたというのだから
それは大騒ぎにもなる
どこからそんな情報が?
と疑問に思うのだが
なんと
作家の泉鏡花が北原白秋の秘密を調べあげていて
つい数年前
泉鏡花の残した厖大なメモが見つかり
それを読み解いていく過程で
北原白秋のこの秘密が日の目を浴びるようになってきた
とのこと
意識という器のなかに
こちら界の水量が増えていくにしたがって
もちろんぼくは
白秋が死んだのは1942年であり
泉鏡花が死んだのは1939年だと知っていたから
泉鏡花が北原白秋の晩年について厖大なメモを残すなんて
ありえないと考えたわけだが
いいや待てよ
そもそもこんなヘンテコな夢を見ること自体がおかしいのだから
ふたりの死亡年を単純に比較したり
もっともコンピューターから遠い感じの北原白秋を
もっともコンピューターから遠い感じの泉鏡花が調査するわけがな
などと決めつけることも
こちら界の通俗思考法へのおかしな固執ということになる
こういった固執を
意識からはどんどん取り除いていかないとナ
と結論していくうちに
こちら界の身体はふらふらと動き出して
台所に行って
コップ一杯の水を飲みはじめた
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