日本のコーラスグループを代表する「ボニージャックス」
この記事を見て
子どもの頃に引き戻されるようだった
「ボニージャックス」
というグループ名は知っている
それどころか
「ダークダックス」とか
「デューク・エーセス」とかも
知っている
コーラスグループというものがいっぱいあって
テレビやラジオによく出ていた頃が
わたしの子ども時代だった
「ダークダックス」とか
「ボニージャックス」とか
「デューク・エーセス」とかは
子どもに聴かせてもよい
あたりさわりのない
「みんなのうた」的なものを多く歌っていて
このひとたちの声で馴染んだ
童謡や唱歌も多かった
登下校時の小学生などには
むしろムード歌謡のコーラスグループのほうが
どこかニタニタさせられるような
滑稽さ加減から
おもしろく感じられ
「黒沢明とロス・プリモス」とか
「鶴岡雅義と東京ロマンチカ」とか
「和田弘とマヒナスターズ」とか
「ロス・インディオス&シルヴィア」といったような
お色気・エロ路線の歌を歌うグループが
人気があった
小学生には大人の恋愛などは
どれもエロそのもので
ムード歌謡のグループの有名な曲を
男の子どうしで歌いながら下校する時など
いっぱしの不良になったような気がしていた
やっぱり忘れられない
変わらぬやさしいことばで
私を包んでしまう
だめよ 弱いから
(『別れても好きなひと』)
などという歌詞を
がなり立てるように歌いながら
エノコログサを引っこ抜いたり
じゅず玉を摘んで集めたりしながら
帰路をゆくのだった
グループではないが
青江三奈の歌の「色っぽい吐息」など
もうポルノそのもののように感じたし
いしだあゆみの
『あなたならどうする』からは
不条理やユーモアやナンセンスが
ない交ぜになった表現を
はじめて学んだ
なにせ
あなたならどうする
あなたならどうする
泣くの 歩くの 死んじゃうの
と来るのだが
捨てられた女が
「泣く」とか「死んじゃう」というのは
わかるとしても
どうして「歩く」が同格で出てくるのか
子どもにはわからなかったし
いまでもわからない
けれども「歩くの」が挿入されたことで
切実たるべき「死んじゃうの」が
ユーモア表現に聞こえてしまうのだ
社会批判と人間批判の極みの映画で
見方によっては小津安二郎の
最高傑作というべき『お早よう』では
フランク永井の『有楽町で逢いましょう』を
唱歌ふうというかワルツふうというか
ずいぶんと明るい調子で
子どもたちにがなり立てさせている
あなたとわたしの合言葉
有楽町で逢いましょう
大人の色恋を歌うムード歌謡ながらも
じつは「有楽町そごう」の出店キャンペーンの
キャッチコピーであり
宣伝用に作られた歌だったのを
小津安二郎は巧みにおちょくっているし
大人の色恋にも有楽町にも縁のない
郊外の子どもたちの雑食性に
凱歌を送っているようにも見える
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