悪魔のように誠実
ヘンリー・ミラー
テーブルに置いた
タロットカードの一枚から
また、潮風
風に
むかし飛ばされた
薄い薄いレースのハンカチが
底の見えないほどの谷の奥から
不可思議な
けれど時機をわきまえたそよ風に乗って
舞い戻ってくる
少年だった頃のぼくの純真よ
ハンカチはずっと
風から風に
やさしく委ねられ継がれて
いちども地に落ちず
奇跡的に雨に降られることもなしに
舞い戻ってくる
偽悪をたびたび装いながら
汚れた気にふさわしい
皮を被ってもきたけれど
そろそろ
棄ててしまおう
いろいろなものを
さようなら
さようなら
潮風の中で戻ってくるたくさんの実体
この化性の岸まで
生まれる前から意識があったのを覚えているのでぼくは無敵
いつでもそこへ帰れる意識を中に抱えているのでぼくは無敵
さようなら
が別れのことばだなんて
思っているなら
甘い
それは
出会いの予言の決意
呼び込み
sayounara
a ou a a
a ou a!a!
いくつかの詩句は聖言となるから
注意深くも記す
ぼくは
受けとめる者に幸あれ
時間は
戻らない直進性の喩としての時間は
超えられた
これまで多くの人において密やかに成就されたように
ぼくによっても
時計の針の進行と全く違うものが時間だったと体感した者に幸あれ
ここに放たれる指し示す指、言葉、語、
受けとめる者に幸あれ
0 件のコメント:
コメントを投稿