家具の裏を伴って
まだ肌寒い
春の野辺に散策に出てきている
小川の水も
ほそぼそしていて
忘れてなどいないだれかの怨念が
どこかから
割った焼き芋から立つ
湯気のように
ひととき
ホカホカと息をふき返す
洟をかんだり
痰を吐かれたりして
くちゅくちゅ丸められたティッシュペーパーが
あたしをちり紙と呼んで!
などと
時代にそぐわない
切ない哀願をしてくる
ちり紙なら
せつなくさびしい愛欲の裏長屋生活を
いっしょにしておくれかい?
おやおや
いつのまにか着いているのは
昔の置屋のあったあたり
溝川沿い
もう
溝川さえもなくなって
コンビニの駐車場になっている
埋められた溝川が
「あんたがたの哀しみを
「また吸いたい…
と
今また
洩らしたような
哀しい風景の減った国はさびしい
これから春
そして
夏
と移っていくはずの時期だから
と移っていくはずの時期だから
野辺には
見つかりようもない
彼岸花
かわりに
野にも
街にも
そう
国じゅうに
これから
かざぐるまをいっぱいにしてやろう
と
あたしらは暗い決意をする
ね
ね
ね
そうして
墓でいっぱいにしてやろうね
国まるごと
野辺送り
して
やるんだよね
ね
ね
ね
(と
(わたくしにさっきから憑依していた
(かわいい青いお顔の霊が
(申しておるんでございますよ
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