招待状も来ていたのに
出かけていくのに怠惰で
終わりもせまった頃
熊谷守一展を見に行く
近代美術館の向こう側のあれ
赤い花はなんだろう
桃かな?
梅の赤いやつかな?
ここから近い靖国神社では
もう桜が開花したという春日
昨日あたりまで
あったかだったのに
うってかわって
寒くなった日
風もあるねえ、今日は
知ったふうな
誰でも言いそうな
物知り顔した
通ぶってはいるものの
いい加減な半可通まる出しの
ちょっとした発見
したので書いておきます的な
それとなく見せても
けっきょく体のいい自己顕示の
文言をたらたら並べるのは
よしておこう
知ったふうに自分でも思っていた
熊谷守一の絵画を
けっこうな量
時代順に見ていってみると
こりゃあ凄い画家だったんだと気づき直し
正真正銘の世界レベルだとか
色彩とかたちの音楽に向かったんだとか
ゴダールなんか軽く吹っ飛んじゃうなとか
天才というよりも
じぶんの脳細胞の反応と進化に
忠実につき合い続けた人だったんだなとか
熊谷守一の画業とマジで今日ぶつかりました的な
ちょっと気の利いたまとめ文句を
いくつも思いの中で
練ってみておりましたが
どうでもいいわけです
そんなのは
小林秀雄的美術感想にも
必死で
陥らないように
しないとね
もちろん
亀井勝一郎でもなければ
河上徹太郎でもなく
他方
宮川淳とか
その後の浅田彰とか
そういうほうにも
陥らないようにしないと
今になって
ふり返ってみる
渋澤龍彦はどうだろうかね
植草甚一の口吻は
どうだろう?
むしろ
もっと有効になってきているかな?
ともあれ
21世紀的『無常といふ事』なんぞ
書き溜めようとしちゃあ
いけません
芸術に接して
一文草しておこうかノ
などという
古風な文芸趣味には陥らないように
けっこう
苦労していかねば
なりません
そんなものは
もう
棄てても棄て切らないほど
世の中にも
書庫にも山積み
古典や世評の定まったものに仮託しての
涼しげな
ひかえめな
閑雅な自己顕示
こういうのにも注意注意注意
美術批評家や
なんだかわからぬアーチストとかいう人たちや
芸術学や美術史のセンセや院生たちの仕事を
奪っちゃあいけません
文化の整理係にして格付け係さんたちに
無難で
目配りの利いた
そこそこの評言はすべてお任せしちゃいましょう
そうしてこそ
現代人は身も心も軽く生きられる
守一のいちばん面白かったのは
どんどんどんどん
キリもなく凄くなっていくところ
30代のこの絵
以前のよりも格段によくなったな
フッ切れたな
そう思って
買うとしたらこれなんか
いいよな
などと思いながら
40代の部屋に行くと
グッと
もっと凄くなっている
50代の部屋に行くとさらに
さらに
凄くなっている
60代の部屋に進んで
こんな絵なんか
買ってもいいかな
と思う間もなく
70代の部屋に入ってみると
あ
やっぱりこっちのほうが凄くなってる
と
こんなことの連続で
効果と魅力と衝撃のどんどん加速するアトラクション
それが熊谷守一の創作の流れ
これにはまいったね
マチスや
ピカソが守一を見たら
いやあ
まいったね
と
やっぱり言ったんじゃないだろか
ド・スタールや
ロスコなんかに見せても
まいったね
だったに違いない
と
想像する楽しみがあって
想像する楽しみがあって
ただの鑑賞者にとっても
ニタニタ物件
であった
であった
ショップでは
図録だの
りっぱな画集だの
関連書物をいっぱい見たが
買いません
後でやっぱり買いたいなあと思ったらアマゾンするよ今時は
時間をおいて
後で
ってのが
大事だ
大事だ
これがわかるのに何十年も費やした
だいぶ前の引っ越しの時に展覧会の図録やカタログを
たしか200冊ほど
丸ごと捨てたのを忘れるでないぞ
その時その時の感動はその時その時の消滅に任せ
永遠の中に吸収させていかせるべし
帰宅してから
夕食までの間に
ちょっと稲垣足穂の『宇宙論入門』を見ていたら
タルホ先生、こうおしゃっておる
「いまより約百億年前、
「宇宙的知性は宇宙的意志に対して果然起って抵抗を開始し、
「宇宙はそこに突如として寂静の夢より醒めて、
「意識的、自覚的状態に入ったのである。
「これぞいわゆる原爆発そのものであり、
「原始アインシュタイン宇宙からの有為的離脱であり、
「時空の創成である。
守一の画業をツラーッとたくさん見て帰って来た
まさにその時に
なんともふさわしいお言葉のシンクロ
ミケランジェロ・アントニオーニの映画の
日常からの逸脱場面の
あのいろいろも
大挙して押し寄せてきたから
見直したくて
また
忙しくなるな
こりゃ
『ある女の存在証明』なんか
特に見直したいな
六本木シネヴィヴァンか
どこかで
どこかで
見たんじゃないかな?
俳優座の
ほうだったかな?
メゼグリーズや
ゲルマントの
ほうだったかな?
ほうだったかな?
メゼグリーズや
ゲルマントの
ほうだったかな?
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