本棚の奥にあったリーヴル・ド・ポッシュ版のランボー詩集は
…お?
誰の校訂版かな?
あゝ…、ピエール・ブリュネルのね*
ま
誰のでもいい
ぱらぱら
めくる
最初のほうに書簡からの抜粋を出しているとこが
ちょっと
変った編集だね
ふつう
後のほうに書簡って
載っけてたりする
で
あまり見なかったりするわけ
ぱらぱら
ぱらぱら
…お?
ロンドンからのヴェルレーヌ宛、1873年
有名な手紙
「戻って来て!戻ってきて!戻って来て!
「いい子にするって約束するからさ**
だって
熱愛の恋文みたい
年上の男ヴェルレーヌを
ほんと
愛してたんだね
熱愛だね
こりゃ
ほんと
「戻って来て!勇気出してさ!なにも失われたわけじゃないさ!* **
Rien n’est perdu.****
なにも失われたわけじゃないさ!
ぼくはガルニエ版のちょっと厚手のランボー詩集を携えて
20代はじめ
東京を歩きまわっていた
松室三郎さんのマラルメ講義を聴いていた頃だ
フランス語で本気で自力で読んだのはランボーが先
ボードレールよりも
マラルメよりも
アポリネールよりも
プレヴェールよりも
ガルニエ版はもうぼろぼろだけど
まだ本棚にある
『いちばん高い塔の歌』の第四連のorieturに
なかなか註が付いていなくて
いろいろな版を買い続けたものだった
このリーヴル・ド・ポッシュ版
3.05ユーロだ
安いから買っておいたんだったかな
薄いし
ランボーとかは
薄いのがいちばん
ぶ厚い研究書みたいになっちゃったランボーの本って
どうかと思う
いま
ぱらぱらすると
ランボー
やっぱり若かったんだな
と思う
ことばが若い一文の長さが若い改行が若い持ってくるイメージが若 い
でも
「かつては、ぼくの生活、宴だったんだぜ。 記憶に間違いがなければね。
「こころというこころはすべて開き
「酒酒酒が流れ出てたもんだ。*****
この冒頭。
『地獄の季節』の。
よく書いたよな
20にもならないやつが
出口裕弘さんがロートレアモンの話をするのを聞いた時
出口さんはランボーやロートレアモン
大好きで
再三再四熟読翫味し続けたが
友だちの澁澤龍彦にはぜんぜんピンとこなかったらしい
って聞いた
あれ、どこが面白いの?
っていうのが
澁澤龍彦のランボー評だったらしい
面白いなァ
って
思ったね
ランボーに
生涯
ピンと来なかった澁澤龍彦
って
さ
あの
澁澤龍彦が
さ
出口さんは1945年旧制浦和高等学校入学
澁澤龍彦も1945年旧制浦和高等学校入学
だから
同窓生で同学年
だから
友だちだったんだね
ほんとに
ふたりとも理系コースだった
出口さんは東日暮里に生まれ
澁澤龍彦は滝野川に育った******
あのあたり
よく知っていて
共有する感覚もあったわけだ
澁澤龍彦は
澁澤さん
とは呼べない
いちど
なにかの個展で
近くに居あわせて
これが澁澤龍彦
と見つめたことがあるだけ
話はしなかった
握手もしなかった
彼の視野には入らなかった
だから
澁澤龍彦
と呼ぶ
*Arthur Rimbaud : Une saison en enfer, Illuminations et autres textes(1873-1875), Le livre de poche classique, éd.Pierre Brunel, 1998.
**ibid.,p.35.
*** ibid.,p.35.
**** ibid.,p.35.
***** ibid.,p.47.
******澁澤龍彦『私の戦後追想』(河出文庫、2012)
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