人口が増えすぎた世の中では
少しでも権力を大目に手にした側が
どうしても強引な押し方をしていくことになる
そもそも
フランス革命が保障しようとしたもろもろの個人的権利を
1791年以降
当の革命の進行自体が露骨に侵害していた
その後に続いたナポレオンも
恐るべき近代的独裁体制と全体主義を出現させたが
閨秀スタール夫人(Madame de Staël)は
このように書いた
彼の恐るべき権力のすべての遺産のなかで、
人類に残されたものと言えば、
圧制の技術のいくつかの秘訣にかんする嫌な知識だけである。
1816年になってさえ
ボナパルティズムの脅威が完全には克服されていないのを
スタール夫人は明晰に受けとめていた
1789年時点の革命の自由主義的諸原理を支持しつつも
崩れに崩れた革命の成り行きと
その後のナポレオンの圧制に続くかたちで亡霊のように染み上がっ
1814年の急進的王政復古にも
スタール夫人は激しく対立せざるをえなかった
あいかわらず
三百年も時流に遅れて支配する必要があるのであろうか。
それとも、新しいヨシュアが
立ち止まれと
太陽に命令するのだろうか。
われわれの祖先のどの世代に対して
無謬性(l'infallibilité)
知りたいものだ。
(…)この社会で求められているのは
絶対君主
排他的な宗教
頑迷な司祭
系図の上に基礎をおく宮廷貴族
時おり解放されて貴族の爵位を得る第三身分
さらにまた
無知でなんらの権利ももたない民衆
全き機械仕掛のような軍隊
無責任な大臣
などである。
出版の自由や
陪審員や民事上の自由などは
少しも求められず
警察のスパイや
闇仕事を褒めそやすために雇われた御用新聞が
求められている。
いくつかの単語を入れ替えれば
現代でもそのまま通用する政治観を
スタール夫人はすでに
死後出版となった1818年の
『フランス革命の主要な出来事に関する考察―その起源から181
(Considérations sur les principaux événements de la Révolution Française depuis son origine jusque et compris le 8 Juillet 1815)
の中で書いてしまっている
ルイ16世の財務長官も務めた
スイスの銀行家で政治家のジャック・ネッケルの娘として生まれ
娘時代から
18世紀の百科全書派の哲学者たちや文学者たちに才能を認められ
スタール=ホルシュタイン男爵夫人アンヌ・ルイーズ・
あらためて再発見されるべく
208年周期の彗星か遊星のように
21世紀に再接近してきているような気がする
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