2025年3月23日日曜日

スタール夫人が208年周期の彗星か遊星のように

 

 

 

人口が増えすぎた世の中では

少しでも権力を大目に手にした側が

どうしても強引な押し方をしていくことになる

 

そもそも

フランス革命が保障しようとしたもろもろの個人的権利を

1791年以降

当の革命の進行自体が露骨に侵害していた

 

その後に続いたナポレオンも

恐るべき近代的独裁体制と全体主義を出現させたが

閨秀スタール夫人(Madame de Staël)

このように書いた

 

 彼の恐るべき権力のすべての遺産のなかで、

 人類に残されたものと言えば、

 圧制の技術のいくつかの秘訣にかんする嫌な知識だけである。

 

1816年になってさえ

ボナパルティズムの脅威が完全には克服されていないのを

スタール夫人は明晰に受けとめていた

1789年時点の革命の自由主義的諸原理を支持しつつも

崩れに崩れた革命の成り行きと

その後のナポレオンの圧制に続くかたちで亡霊のように染み上がっ

1814年の急進的王政復古にも

スタール夫人は激しく対立せざるをえなかった

 

 あいかわらず

 三百年も時流に遅れて支配する必要があるのであろうか。

 それとも、新しいヨシュアが

 立ち止まれと

 太陽に命令するのだろうか。
 われわれの祖先のどの世代に対して

 無謬性(l'infallibilitéというものが与えられたか

 知りたいものだ。
 (…)この社会で求められているのは

 絶対君主

 排他的な宗教

 頑迷な司祭

 系図の上に基礎をおく宮廷貴族

 時おり解放されて貴族の爵位を得る第三身分

 さらにまた

 無知でなんらの権利ももたない民衆

 全き機械仕掛のような軍隊

 無責任な大臣

 などである。

 出版の自由や

 陪審員や民事上の自由などは

 少しも求められず

 警察のスパイや

 闇仕事を褒めそやすために雇われた御用新聞が

 求められている。

いくつかの単語を入れ替えれば

現代でもそのまま通用する政治観を

スタール夫人はすでに

死後出版となった1818年の

『フランス革命の主要な出来事に関する考察―その起源から181578日まで』

(Considérations sur les principaux événements de la Révolution Française depuis son origine jusque et compris le 8 Juillet 1815

の中で書いてしまっている

 

ルイ16世の財務長官も務めた

スイスの銀行家で政治家のジャック・ネッケルの娘として生まれ

娘時代から

18世紀の百科全書派の哲学者たちや文学者たちに才能を認められ

スタール=ホルシュタイン男爵夫人アンヌ・ルイーズ・ジェルメーヌ・ネッケル(Anne-Louise Germaine Necker, baronne de Staël-Holstein)が

あらためて再発見されるべく

208年周期の彗星か遊星のように

21世紀に再接近してきているような気がする

 




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