2021年2月5日金曜日

神の国発言の記憶も薄れてきていたから

  

 

     社会学的研究においても、言語の研究におけると同様、

     われわれがまさにシンボルの世界にいることを決して忘れぬこと…

     レヴィ=ストロース『構造人類学』

 

 


むかしから森喜朗は

ここぞ

という時にクリーンヒットをかましてくれる人だったが

今回も大ホームランで

打球はなんと海外まで飛んでいった

という快挙

神の国発言の記憶も薄れてきていたから

これは本人にとっても

ひさしぶりに

晴れがましい活躍と感じられたのではないか

 

日本中の津々浦々に

居酒屋談義の話題を提供してくれる才覚は

いまだに衰えを知らず

と見たね

いまは居酒屋は自粛を余儀なくされているが

人間到ル処ニ居酒アリ

であるからして

あちこちで森喜朗の大ホームランは楽しまれた

はずである

 

女性がたくさんいる会議は時間がかかる

とか森喜朗は言うが

もちろん

男性

いやオヤジが

たくさんいる会議の場合はもっとひどいわけで

威勢を張ったり

訳知りぶりを披露したり

どうだオレの分析能力を見ろ!とばかりに

細部から細部をほじくり返し続ける

オヤジたちばかりの会議の

あのエンエンと続くことといったら

いまだ旧態依然人種の残っている組織では

ごくごく日常的なこと

 

それにしても

この森喜朗の発言は

現実には

日本の各地の会社や組織でヒソカニ首肯せられたであろうことは

想像に難くない

公には誰もあんなことは言わず

公にはナントイウコトヲ!などと遺憾批判憤慨を演じつつも

トイレや裏通りや廊下の暗がりあたりでは

男どうしになれば

全くあの通りだがなァ

ああ大っぴらに言っちゃ拙いけどナ

いやァ真実をそのまま言っちゃァいけないよ

などと

喋っているのは疑いようもない

表と裏の使い分けこそ日本文化であるばかりか

未来永劫オヤジ寿ぐ国柄であるからして

 

トイレや裏通りや廊下の暗がりあたりだけではなく

どこであれ

オヤジどうしの会議では

あんな発言はごくごく当たり前で

もし非を唱えたりしたら

オヤジ社会から浮いて

たちまちはじき出されてしまう実情は

男性ならばご存じに違いない

かならずニタニタした顔を返しておかねばならず

たしかに…とか

そういうもんですよね…とか

ホントに…とか

まったく…とか

そんな相づちを返しておかないと

男であれ

男社会にはいられなくなる

 

本当にどうしようもないのは

なかなか明晰に描き出し得ないそんな構造が

微に入り細に入り

この神の国には浸透仕切っている

ということ

 

たゞ

言っておくが

外国だって

まったく同じだヨ

日本のほうが

まだまだ

暴力の度合いが少ないかも

しれない




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