2024年3月9日土曜日

現在生活の一面についての報告と考察 aからi

  

 

  a

 

大病院に行くと見られるような

面積のひろい

大きなエレベーターだった

 

そのなかに布団を敷いて

妻と

寝起きしている

 

エレベーターを

寝室として使っているのだ

 

布団は

ダブルではなく

シングルをふたつ

並べていた

 

 

 

b

 

目覚めて

仕事に行く準備をしよう

と思った

 

エレベーターは

高層ビルのなかを上下に動いている

 

職場は

同じビルのなかの

いくつかの階にあるが

とりあえずは

1階に行く必要があった

 

どの階にも

洗面所や

シャワーや

着替える部屋などはあるのだが

1階にあるそれらが

リノベーションされたばかりで

いちばん大きくて

気持ちがいいのだ

 

 

 

c

 

昇降ボタンを押して

1階にむかう

 

ビル内では

だれもが使えるエレベーターだから

どこかの階から呼び出しがかかってもいいのだが

なぜか

今朝はどこにも止まらない

 

(ちなみに

目覚めた時の階は

22階である)

 

 

 

d

 

1階に着き

エレベーターのドアが開く

外はロビーだが

すでに

たくさんの人々が行き来している

 

寝間着のまま

ぼさぼさの髪の毛で

このロビーを歩いて行くのは

気が進まない

 

(とはいえ

日によって人々の行き交う数は違っても

毎朝のことなので

いまさら

気にする必要もないのだが)

 

そこで

さっき居た22階へ戻り

そこの階にもある

洗面所を使うことにする

 

 

 

e

 

エレベーターのドアを閉め

昇降ボタンの

22階を押そうとするが

22階や21階や20階などが黒くなっており

そのあたりを押しても

反応がない

 

もう一度

エレベーターのドアを開け

1階のロビーを見てみる

 

エレベーターの中近くを行くOLたちが

「今日はエレベーター点検があって

上のほうの階に行けないのよね」

などと話している

 

 

 

f

 

おもな着替えや

身のまわりの品は

22階にある自室に置いてある

そこに行けないとなれば

今日は一日中

寝間着のままで過ごすほかなくなる

 

しまったなぁ

 

さっき

22階で目覚めた際に

あの階に出て

あそこの階の洗面所などを使うことにしておけば

よかった

 

 

 

g 

 

エレベーターの中で

まだ

妻は寝ている

 

こんなことなら

自分も

もう一度寝て

今日という日をやり過ごすほうが

いいかもしれない

 

やるべきことがあるので

もちろん

そんなわけにも

いかないが

 

 

 

h

 

それにしても

朝のせわしない時間だというのに

なぜ

自分が乗っているエレベーターには

人々が入ってこないのか

 

じつは

入ってきているのだと思う

 

入ってきては

別の階に移動して

人々は

そこに出て行っている

 

にもかかわらず

自分と妻だけしか乗っていないように感じるのは

このエレベーターに入ってくる人々が

自分と妻の存在様態層とは異なった様態層にあるからで

たとえエレベーター内が満員になっても

かれらの姿は見えないし

存在も感じない

むこう側にも

こちらの存在は感じられない

 

なのに

エレベーターの外を覗くと

どうして

彼らの姿が見えるのだろう?

 

これが

いつも謎で

わたしの人生における

最大の存在論的問題であり続けている

 

 

 

  i

 

エレベーターの外に出ても

どうせ人々には

ふつうはわたしの姿は見えないのだから

寝間着のままだったり

髪がぼさぼさであろうとも

気にしなくてもいいのだが

なんとなく気にしてしまうところが

取り越し苦労ともいえるし

わたしの

目下の欠陥といえば

いえる

 

 



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