a
大病院に行くと見られるような
面積のひろい
大きなエレベーターだった
そのなかに布団を敷いて
妻と
寝起きしている
エレベーターを
寝室として使っているのだ
布団は
ダブルではなく
シングルをふたつ
並べていた
b
目覚めて
仕事に行く準備をしよう
と思った
エレベーターは
高層ビルのなかを上下に動いている
職場は
同じビルのなかの
いくつかの階にあるが
とりあえずは
1階に行く必要があった
どの階にも
洗面所や
シャワーや
着替える部屋などはあるのだが
1階にあるそれらが
リノベーションされたばかりで
いちばん大きくて
気持ちがいいのだ
c
昇降ボタンを押して
1階にむかう
ビル内では
だれもが使えるエレベーターだから
どこかの階から呼び出しがかかってもいいのだが
なぜか
今朝はどこにも止まらない
(ちなみに
目覚めた時の階は
22階である)
d
1階に着き
エレベーターのドアが開く
外はロビーだが
すでに
たくさんの人々が行き来している
寝間着のまま
ぼさぼさの髪の毛で
このロビーを歩いて行くのは
気が進まない
(とはいえ
日によって人々の行き交う数は違っても
毎朝のことなので
いまさら
気にする必要もないのだが)
そこで
さっき居た22階へ戻り
そこの階にもある
洗面所を使うことにする
e
エレベーターのドアを閉め
昇降ボタンの
22階を押そうとするが
22階や21階や20階などが黒くなっており
そのあたりを押しても
反応がない
もう一度
エレベーターのドアを開け
1階のロビーを見てみる
エレベーターの中近くを行くOLたちが
「今日はエレベーター点検があって
上のほうの階に行けないのよね」
などと話している
f
おもな着替えや
身のまわりの品は
22階にある自室に置いてある
そこに行けないとなれば
今日は一日中
寝間着のままで過ごすほかなくなる
しまったなぁ
さっき
22階で目覚めた際に
あの階に出て
あそこの階の洗面所などを使うことにしておけば
よかった
g
エレベーターの中で
まだ
妻は寝ている
こんなことなら
自分も
もう一度寝て
今日という日をやり過ごすほうが
いいかもしれない
やるべきことがあるので
もちろん
そんなわけにも
いかないが
h
それにしても
朝のせわしない時間だというのに
なぜ
自分が乗っているエレベーターには
人々が入ってこないのか
じつは
入ってきているのだと思う
入ってきては
別の階に移動して
人々は
そこに出て行っている
にもかかわらず
自分と妻だけしか乗っていないように感じるのは
このエレベーターに入ってくる人々が
自分と妻の存在様態層とは異なった様態層にあるからで
たとえエレベーター内が満員になっても
かれらの姿は見えないし
存在も感じない
むこう側にも
こちらの存在は感じられない
なのに
エレベーターの外を覗くと
どうして
彼らの姿が見えるのだろう?
これが
いつも謎で
わたしの人生における
最大の存在論的問題であり続けている
i
エレベーターの外に出ても
どうせ人々には
ふつうはわたしの姿は見えないのだから
寝間着のままだったり
髪がぼさぼさであろうとも
気にしなくてもいいのだが
なんとなく気にしてしまうところが
取り越し苦労ともいえるし
わたしの
目下の欠陥といえば
いえる
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