花の好きなひとには
ソメイヨシノの開花がどんどん遅れていくのは
うれしい
春から夏にむけて
咲く花は
ソメイヨシノだけではない
ソメイヨシノだけで終わってくれれば
どんなに楽だろう
と思うけれど
いっしょに山吹も咲くし
チューリップも咲いているし
ネモフィラも咲いているし
ソメイヨシノが終わる頃には
桜の仲間のなかでもヤエザクラ系の時期が来て
これがまた
ソメイヨシノとちがう
ぼってりした魅力を出すうえ
花期がすこし長く保つので
しばらくは
ヤエザクラの木々のあたりを
昼も夕暮れも
ちょっと時間があったりすると
ボーッと歩きまわったりさせられる
桜の花のたぐいがようやく終わったな
と思う頃には
牡丹や芍薬や藤の花の時期が
もう迫っている
どこの花園できれいに咲いているそうだ
と聞くと駆けつけ
あっちの公園のがきれいらしい
と耳にすると遠出もしたりする
桜の花見よりも時間を取られてしまう
牡丹や芍薬が終わると
今度は待ってましたとばかりに
薔薇の開花期がやってくる
バラは種類も多いので
あちこちの名園でお得意の品種があり
一箇所だけ見に行けばいい
といいような安楽な鑑賞で済むものではない
昨日あっちのバラ園に行ったら
今日はこっちのバラ園
明日は日比谷公園などというぐあいに
数週間はバラの精霊たちに引き回される
そうして
今年のバラもだいたい見終えたな
と思う頃には
今度はショウブやアヤメやカキツバタの咲く
梅雨の時期がやってきて
もう夏にほんとうに入っていく
朝顔市など七月だろうとのんびり構えていると
梅雨の雨降りやじめつきの面倒に
日々それなりにつき合って暮らすうちに
アッという間に六月も終わっていく
花好きには
こんな駆け足の
休みなしの三ヶ月が始まってしまうのが
ソメイヨシノの開花期なので
一日でも遅く
一日でも遅く
と願ってしまうことになる
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