すべては宙を漂っているので
電波を受信するように
それらを掴めばいいだけのこと
なるべく
それらに近く言葉にしようとはするけれど
お札や貨幣なんかと同じように
言葉には
それを口にし
手にし
脳細胞間を通過させた
無数の人々の垢がこびり付いているので
はじめから
幾重にも
諦めに諦めてかかるしかない
むかし
泥の川で
遠い山奥から流れてきたらしい
汚泥にまみれた大きな葉を拾って
すごいねえ
大きいねえ
りっぱだねえ
でも泥んこでどうしようもないねえ
なんてしゃべりながら
葉柄を摘まんで
持ち上げてみたよねえ
蓮原幸太郎くん?
でも洗いもせずに
また川に投げ込んで
返り見もしなかったよねえ?
ぼくはときどき
あの大きなりっぱな葉っぱを
せめて
ちょっと水洗いして
なんの葉か
たしかめるぐらいは
してもよかったと思うんだよ
ひょっとしたら
特別な鳩が落っことしていった
未知の陸地の木の
だいじな葉っぱだったかもしれないんだから
ぼくらはいまでも
陸にたどり着けずに
大洪水のなかを
こんなに揺れ続けているんだから
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