2018年4月16日月曜日

もう誰のものでもいいような身を

                                                                  
そのバスルームは
森の奥に建つ高層ビルの最上階にあり
きれいな月の出ている晩など
ブルーの空気の満ちる中で
湯に浸かっていられる

透明ガラスの天井は
星空も見せてくれるが
ガラスはやはり
湯けむりで曇りがちになる
全開できる天井なので
開け放ってしまえばいいのだが
湯で曇ったガラス越しに
満天の星座を窺うのも楽しい

かんかん照りの時などに
側面の窓を開け放ち
湯に浸かっているのもいいが
側面全部もやはり透明の硬化ガラスなので
暮れがたなど
西空や雲の色の刻々の変化を見つづけながら
すっかりからっぽの
あたまと
こころになって
湯船に
もう誰のものでもいいような身を
ふらふら
浮かべたりしているのもいい



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