もちろん初めのうちは明るいところで待ちあわせをし
今日や昨日の出来事を二言三言たずねたりしながら
次第に小道を暗い暗いほうへ辿っていき
やがて街灯から少し離れた闇の中のベンチに腰を下ろすのだったが
それもたび重なるうちには
初めから闇の中のそのベンチで待ちあわせるようになり
後から来たほうが先に来ていたほうの肩に手を置いても
おたがいになにも言い交わさないほどにまでなっていったのだった
そんな頃からもうずいぶん時も経て
今では明るいところや明るい時間へ戻ることもとうにやめてしまっ て
おたがいにどこからどこまでが相手か自分か
すっかりわからなくなってしまっていて
ごく稀に昔の頃の分断や離別のあった頃のことが懐かしくなりもす るが
それとてもどちらが懐かしがっているのかわからず
むしろ懐かしさが霧や靄のようにふと訪れてきて
わたくしたちを鏡となして姿見しているのかと思わせられる
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