ずんずんずんずん

 

 

虫に刺されようが

ヘビが出てこようが

雑草の繁みのなかをずんずん行って

そんなに大きくないその池に

ぼくはよく通った

 

なぜだか

そこではヘラブナが釣れる

 

ほかの

もっと大きな池などでは

クチボソや

フナや

ときにはコイも釣れたが

ヘラブナは釣れない

 

家からは

まず駅まで行って

駅の近くのトンネルを抜けて

むこう側の町に出て

そうして

大きな川のあるほうに向かって

ずんずん

ずんずん行くのだ

 

大きな川までは

まだまだ距離のあるところで

急に巨大な草原がはじまる

その草ぼうぼうのなかを

ずんずん

ずんずん行くと

その池に着くのだ

 

ヘラブナが釣れても

けっきょく

ぜんぶ逃がしてきてしまう

家には７０センチ幅の水槽しかないし

すでにほかの魚がいるので

ヘラブナなんか入れたら

満員になってしまう

持って帰るわけにはいかない

 

それなのに

日曜日だとか

休日だとなると

着くのにけっこう歩かないといけない

その池まで

ずんずん

ずんずん

歩いて行く

そうして

今日は何匹釣れるかな？

なんて思って

糸を垂れはじめる