年が明けると
元日だけは家で食べたが
二日からは料理屋のお呼ばれで忙しく
いい酒も出されるものだから
疲れないように少なめにはするものの
どうしても飲みすぎてしまう
昨日やおとといは
海沿いの広いレストランに呼ばれて
たった五人ばかしで
暮れていく海を見晴らしながらの
静かな宴だったが
それでも魚介の澄んだ味わいの料理に
会話はときおり賑わった
どこかの地方では
なにかのウイルスが流行っているとか
じつは人心操縦のためで
流行ってなどいないのだとか
いろいろと秘書のギュスターヴが教えてくれるが
流行っているのもいいじゃないか
プルターク英雄伝とか
史記あたりをじっくり読む時間がとれて
とってもいいじゃないか
そんなことを
ぽつりぽつり言いながら
ピンクの大理石を張り詰めた化粧室で
ちょっと乾いた顔の肌に
ギュスターヴが蓋を開けて差し出してくれた
ドゥ・ラ・メールの保湿クリームを
たっぷり塗り込んだ
テーブルに戻ると
この爽やかなワインはまだお飲みではなかったかと…
と勧められて
美しい大ぶりのグラスに注いでもらったのは
……いや、
この名はここには記さないでおこう
0 件のコメント:
コメントを投稿