面白い夢を見た
夢はいつも面白いのだが
この夢は
ことのほか面白かった
といっても
これといった風景も光景も
なにもない
夢のなかのじぶんの
そのアタマのなかの
考えだけの
夢
夢のなかでも夢を見ていて
その夢のなかの夢から
そろそろ覚めようとしているのである
そこで
夢のなかで展開していた小さな活動を終わりにし
片付けをし
夢から覚めていこうと考えている
その際に
終わりにする
片付ける
という考えが異様に自立し
ひとり歩きして
目につくものすべてを
終わりにしよう
片付けよう
という考えに凝集し
意志になっていく
そうして
身近なものすべてを
終わりにし
片付けていくのだが
最後に
行為者であり存在者であるじぶんをも
やっぱり
終わりにしよう
片付けよう
夢から覚める前に
と
結論づけ
じぶんを終わらせ
片付ける作業にとりかかる
しかし
とりかかったところで
ふと
じぶんのことは
まだ
終わらせなくてもいいのではないか
片付けなくてもいいのではないか
と思い
終わらせ
片付ける作業を
中断した
そうして
潜っていた水中から上がって来るように
夢から目覚めた
あそこで
じぶんを終わらせ片付ける作業を完遂していたら
きっと
眠ったままで死んだのではないか
と
後で思った
眠ったまま
存外
平穏な顔で死んでいってしまう人たちは
きっと
これだろう
夢のなかで
じぶんを終わらせ
片付ける作業を
しっかり
滞りなく
遂行し続けただけの
ことなのだろう
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