2022年1月28日金曜日

それだけのこと

 


夢のなかで

天井のとても低い

大きな教室のようなところの

すみっこに

居た

 

それだけの

こと

 

 

きれいに清掃されてあって

むこうの端に

ひとが何人かいる

 

会議のようなものを

したような

しなかったような

 

それに

参加したような

しなかったような

 

それだけの

こと

 

なんという

茫漠とした

うすら寂しさだろう

 

夢だといいな

  と

思ったが

夢のなかでは

それは夢ではなく

現実だった

 

それだけの

こと

 

ひとつの夢が終わって

それが脱ぎ捨てられると

終わった夢のなかへ

助けにいかなければいけない

たくさんの意識たちの

残滓がいる

 

助けに行かれずに

そのまま

消滅していくままにする

場合も

たくさんあって

 

無力で

残虐なぼくだな

まったく

  と

いつも

思う

 

火の中に

どんどんくべられていく

乳児たちを

エリ・ヴィッセルが

殲滅収容所で見た時のように

非常時なので

 

無力で

残虐なぼくなので

 

それだけの

こと





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