2022年1月19日水曜日

しかしそれはやめて


 

学校の校舎の東南には八重桜の園があって

桜の時期には鬱蒼たる桜花に息詰まるような光景となったが

学生の我々にはまだ八重桜の美しさはわからず

むしろ花の散ってからの青葉の繁る頃の

ケスがうるさく鳴き騒ぐようになってからのほうが

もっと親しめる場所となるように感じた

 

そこの木々の間を通り抜けて

我々は広大な第二校庭へと出ていき

駅までの下校の道を辿り始めるのだった

 

もっとも

そこを抜けていく学生の数はあまり多くなく

おそらく全校でも30人もいなかった

わざわざ留まってなにかするほどの面白い場所でもなかったので

我々はただ朝夕の二度を通過するだけだったが

なぜかこの園が

学校を卒業してから十年以上も経って

夢に頻繁に出てくるようになった

 

そのことをここで書こうと思うわけではなく

蒜田君から貰ったハイシャトーという珈琲の味わいについて

手短に記しておきたかった

 

しかし

それはやめて

明日からの総攻撃のための気持ちの準備に

やはり入ろうと思う






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