謎は深まるばかりだ
と
森の中を行く
人生には意味がない
むかし
まだ
ほんとうに若い頃
師
と呼べる唯一のひとがこの列島に立ち寄り
ただ生きていろ
と
私に言った
肉体と
心(心とは思念の流れである)は
意で統制できぬままに
動き続け
変化し続ける
我が我ならざるものに接する時に
意は発生するが
意の無力をここでは生きよ
最後には
意
も消えて
観
だけとなる
観には我はないので
観を経験する者はない
観は経験されず
所持されない
このように言って
師
は
また
長距離列車に乗り込んで去った
ジャイナ教や
シーク教
あるいはイスラムのある派のような
大きな白い布を纏った姿だった
よくイエスを描く時の姿にも
酷似していた
謎とは
表象の誘い
複雑な迷路やパズルは
解いたり
辿ったりするもので
それらの
意味や意義を解明しようとするのは
愚かでしかない
謎を深めるのは
謎を深められる能力の
ある
者のみ
森の中を行く
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