ちかごろ
あまり触れない本のならぶ棚に
近づいたら
呼ばれている気がした
一冊
手にとると
イヴ・ボヌフォワの詩集
『曲がった板』
ぱらぱら
ページをめくってみると
イヴ・ボヌフォワは
歌っていた
おお 詩よ
だれにも愛されなくなったきみのその名で
ぼくはきみを呼ばずにはおれない
こんにち ことばの廃墟のなかを
さまよっている人びとのなかにあって……*
そのとなりのページでも
イヴ・ボヌフォワは
歌っていた
おお 詩よ
ぼくは知っている
きみが軽蔑され否定されているのを
きみなんぞ劇にすぎず
さらには嘘っぱちだと人びとが見なしているのを
間違ったことばづかいを浴びせて
人びとがきみを打ちひしぐのを
きみが人びとにもたらす水は悪いものだと言われながらも
それでも飲もうとする人びとはおり
しかしながらきみの水にがっかりして
死のほうへと向きを変えていく人びとがいるのを……*
呼ばれている気がしたら
すなおに
向きを変えていくと
やっぱり
いい
死のほうへ
かならずしも
向かうばかりでも
ないから
*Yves Bonnefoy “Dans le leurre des mots” dans « Les planches courbes », Mecure de France, 2001
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