また
なにか
小川もないのに
葉でも
言の葉でも
いや
事の葉でも
古都の端
の
宿で
冬子とゆっくり午後を過ごして
ならば
ことのは
とひらかな書きで
してみたほうが
よさそう
で
そうね
華は
死んだのですものね
お墓を
きのうわたくしたち
洗って
ちょっといいお線香を手向けて
お花は
でも
野で摘んだ花
華は
ぼくのいちばんの愛人
冬子
きみは二番の愛人
それははっきりしている
だからといって
きみへの
愛情が欠けているなんて
ことは
ないんだよ
わたくしは二番の愛人
いいんですの
よくわかっておりますの
二番の愛人に
なりたかったなあ
わたくし
少女の頃から
取り憑かれて生きてきましたのね
そんなもの思いに
二番の愛人
という
しあわせ
そのかわり
一番の華がいない
しあわせ
(愛人
などと言っているけれど
華とはなんにも
なかった
華に
愛人などと言ったこともなかった
華はどう思っていたか
それさえ
聞かなかった
いっしょにいることさえ
ほとんどなかった
でも
あなたがいるとうれしい
あなたはほんとうに大事なひとだ
などと
よく伝えただけ)
ぼくは思う
よく思うようになった
いわば
地の文を
捨ててしまうことだ
と
なになになになになになになに
と思った
の
と思った
を
捨ててしまうことだ
と
セリフの
カッコの部分さえ
捨ててしまうことだ
と
セリフも
思いも
野に
空中に
水上に
放ってしまうことだ
と
冬子の乳房は熟れた桃
華のそれは知らない
華のそれにぼくが耽溺したと
冬子は思っている
思わしておく
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