2025年2月22日土曜日

コンクリート破片が50センチほどの高さで

  

 

コンクリート破片が

50センチほどの高さで

宙に浮いている

 

穏やかに晴れた日だが

気温が低い

 

人通りがないので

宙に浮いているコンクリート破片に

わたし以外気づいていない

 

陽は西に下がりつつあり

気温がさらに落ちていっているが

本当に雲ひとつない晴れで

空は薄青いまま

上に広がっている

薄青さには

グラデーションがかかって

正確に言葉で表わそうとするのは

難しい

 

コンクリート破片が

なぜ宙に浮いているのか

わからない

 

人から聞かされれば

もちろん

信じないだろう

 

奇術師が

辻公園のわきの

こんな細い道で練習しているとも

思えない

 

誰もいない

 

太陽が直接あたっているわけではないので

コンクリート破片の影は

地面に濃く落ちてはいない

薄い影は落ちているような気がするが

よく見ると

影ではないらしいと

気づき直す

 

浮いている破片の下には

アスファルトが広がっている

薄い影が落ちているのかどうか

見つめてみると

アスファルトの質感に

気づき直す

 

アスファルトも

美しいものかもしれない

と思う

 

ここから見える

むこうの大通りの遠い信号が

赤に変った

 

信号の光に

ふいに

心を奪われるような時刻が

近づきつつある






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