コンクリート破片が
50センチほどの高さで
宙に浮いている
穏やかに晴れた日だが
気温が低い
人通りがないので
宙に浮いているコンクリート破片に
わたし以外気づいていない
陽は西に下がりつつあり
気温がさらに落ちていっているが
本当に雲ひとつない晴れで
空は薄青いまま
上に広がっている
薄青さには
グラデーションがかかって
正確に言葉で表わそうとするのは
難しい
コンクリート破片が
なぜ宙に浮いているのか
わからない
人から聞かされれば
もちろん
信じないだろう
奇術師が
辻公園のわきの
こんな細い道で練習しているとも
思えない
誰もいない
太陽が直接あたっているわけではないので
コンクリート破片の影は
地面に濃く落ちてはいない
薄い影は落ちているような気がするが
よく見ると
影ではないらしいと
気づき直す
浮いている破片の下には
アスファルトが広がっている
薄い影が落ちているのかどうか
見つめてみると
アスファルトの質感に
気づき直す
アスファルトも
美しいものかもしれない
と思う
ここから見える
むこうの大通りの遠い信号が
赤に変った
信号の光に
ふいに
心を奪われるような時刻が
近づきつつある
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