いま世界で起きていること
これから起きていくこと
それらをいっぱいに感じとろうとすると
映画『アウト・オブ・アフリカ』の音楽が蘇ってくる
(日本では
『愛と哀しみの果て』という
陳腐なタイトルに
されていた)
out of africa bluray remastered opening theme
https://youtu.be/TPjYvFUfV00?
John Barry – Out of Africa | WDR Funkhausorchester
https://youtu.be/7h5WgLFbMJQ?
波乱に富み
個人の人生経験としては
それなりに壮大なものだったすべてが
もうすっかり終わって
今はもう
ただ回想するだけ
いつまでも回想するだけ
という音楽で
味わいもあるが
流麗で
かなしい
これまで
人生という妄想を支えていた
物質的で
世の流れに乗せられていただけの
なんの価値もない
しかし
価値があるかのように
みんなで信じあってきたすべてが
全世界規模で瓦解していく
この終焉を迎えるのには
『アウト・オブ・アフリカ』の音楽は
いかにも適している
そんな気がする
多くの人が実際に死んでいき
死を選んでいき
多くの家族が消滅していき
若者の夢も
老年の憩いも失せていくだろうが
偽りを信じた報いは
厳しく平等に万人に訪れるだろう
崩壊し
消えていく集団や
人びとが
あまりに多くなる場合には
救う気持ちも
もう失せて
ただ眺めているほか
なくなる
昭和13年
三菱商事の社員として中国大陸にいた歌人の香川進は
朝鮮・満州・ソ連の国境で
日本軍とソ連軍が衝突した際に現地で召集され
兵士にさせられて
こんな短歌を作った
夕まぐれわれは水飲みにくだりゆき死にゆく兵は死ぬに任しぬ
これと同じで
死にゆく人びとは
死ぬに任せるほかなくなるだろう
助けるすべが
まったくなくなるから
氷の上はずみをもちて轉(ころ)げくる弾丸の一つがわれを殺さむ
寒さで地表が凍っているので
敵が撃ってくる弾が
氷の上に落ちても角度を変えて跳ね返って飛んできたりする
それに当たったら
自分は死んでしまうだろう
というのだが
あらゆる世界情勢が今
自分をも殺すかもしれない
氷の上で跳ねて
あらぬ角度から飛んでくる弾丸となる
銃剣をひきぬきしかば胃袋よりふきいづる黄いろき粟粒みたり
敵兵の腹部を銃剣で刺したら
ちょうど胃袋が裂けて
中に溜まっていた黄色い粟粒が吹き出てきた
という歌だが
敵兵は少し前に粟粒を食べてから戦闘に入ったのだろう
一兵士たる香川進は
兵士として自分が行った殺傷を
冷静に
冷酷に
カメラで正確に写すように描写している
さすがに
このような行為を強いられるところまでは
追い込められたくはないが
これに近いところまで
平成や令和の軟弱時代を暮らした民は
追い詰められていくことだろう
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