2025年2月8日土曜日

くだらない本

 

 

 

くだらない本

という言い方をする人がいるが

どんな本でもとりあえずはめくってみるような人は

くだらない本

というものが存在しない

と知っている

 

くだらない本

などというものが

あまりに

無さ過ぎて

恐ろしくなるほどだろう

 

どの本もめくる価値があり

どの本も読む価値があり

どの本も所有すべき価値がある

と気づかされることほど

本好きにとって

恐ろしいことはない

生きているかぎり

本の物理的な重圧と場所取り性に

抑圧され続けなければならないからである

 

ある意味では

本は

空地や山道に落ちている石片や枯れ枝のようなもので

使いようによって

価値も出れば

役立たずにもなる

 

もう少し近い譬えを用いれば

本は

半導体そのもので

うまく使えば大変な威力を発揮するが

性能も知らず繋げ方も知らなければ

ただのゴミに終わる

 

本だけでなく

世の中には

くだらないものシリーズがいっぱいで

くだらない映画

くだらない音楽

くだらない絵

くだらない集まり

くだらない仕事

くだらない会社

くだらない授業

くだらない学校

くだらない人生

などなどが溢れている

 

どれもこれも

使いようにかかっている

と気づき直せば

くだらない

と形容する発話者の愚かさを表わすに過ぎない

とすぐにわかるので

くだらない

という形容詞は

じつは

とても価値のある言葉だとわかる

 

とても価値のある言葉だ

とわかったうえで

くだらない

くだらない

くだらない

……

とくり返し呟いてみると

なんだか

御利益に溢れた呪文のように聞こえてくるから

くだらない

という言葉は

やはり

くだらなくないようなのである





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