2025年2月6日木曜日

人情を棄べきなり

 

 

 

世のため人のため……

という

甘いことを言って善人ぶったり

世間の歓心を買おうとする者は多いが

道元は厳しい

 

まず

人情を捨てよ

と説く

 

仏法は人界の常識の範疇にはないので

人界の思考や価値判断を捨てなければならない

 

人界の人間たちは

これが善

これが悪と

善悪を決めて

是非を定めて

これを選び

あれを非として避けるが

そんな思考態度は世情であり

小乗根性である

と説く

 

夜話に云く、

学道の人は人情を棄べきなり。

人情をすつると云は仏法に随がひ行くなり。

世人おほく小乗根性にて、

善悪をわきまへ是非を分ちて是をとり非をすつるは、

みな是れ小乗根性なり、

只先づ世情をすてて仏道に入るべし、

仏道に入には、

我こころに善悪を分けて、よしと思ひあししと思ふことをすてて、

我が身よからん、我が意ろなにとあらんと思ふ心をわすれて、

善くもあれ悪くもあれ、仏祖の言語行履に随がひゆくなり。

吾が心に善しと思ひ、世人のよしと思ふこと、必ずしも善からず。

然あれば人めもわすれ、吾が意ろをもすてて、仏教に随がひゆくなり。

身もくるしく心も愁ふるとも、

我が身心をば一向にすてたものなればと思ふて、

苦るしくうれへつべきことなりとも、

仏祖先徳の行履ならばなすべきなり。
(『正法眼蔵随聞記』第二の四)

 

 

善悪の区別は

結局は

利己的な現世利益のために行う区別で

これほど欲にまみれたものはない

 

ここに

善人なるものの

救いがたい悪人性が露呈する

人界における善人は

ことごとく悪人であり

正義こそ悪であり

最大の魔である

 

そこまでは

道元は言わないが

あたりまえ過ぎるので

言わないだけのこと

 

 




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