2022年1月4日火曜日

だれかかわいいおバカちゃんに


 

アルフレ・ド・ミュッセのふたつの詩集

Premières poésies

Poésies nouvelles

『初期詩編』とか

『新詩集』とか訳すのが

外国文学紹介のお作法にはかなっているだろうし

ちゃんとした感じにも見えるだろうが

だれかかわいいおバカちゃんに

(最近はそういう子が減っちゃってさびしい・・・)

訳して見せてあげたい時なんかは

『ぼくの最初の詩編たち』とか

『ぼくのあたらしい詩たち』とかと

ぼくなら訳してみたい気がする

 

そのふたつの詩集のための

序文

というか

なんたってソネット形式で書かれてるんだから

序詩というべきだが

ひょんな時にそれを見直したりすると

もう若くもないぼくなのに

グッと気持ちを衝かれたりする

あゝ、ミュッセって

やっぱり詩人だなあと思う

詩人っていうのは

とにかく無防備っていうことで

無防備もいいとこのミュッセなんかは

まぁ

なんと勇敢だったか

と思う

いまさらながらに

 

こんなこと

共感してくれそうなのは

日本でだったら

きっと

立原道造とか

堀辰雄ぐらいしか

いないんじゃないかな

と思ったりする

 

あゝ、

津村信夫なんかも

ひょっとして

共感してくれたりする

かな

 

語りはじめたついでだから

ミュッセの序詩を

意訳しておこう

 

 

作者より

詩集二巻分の

読者へ

 

この本 まるごと ぼくの青春

そうするつもりなど ほとんどなしに作ったものさ

認めざるをえないけど 無思慮だったのははっきりしている

推敲ぐらいは すべきだったかもしれないよね

 

人間ってのが たえず変化するんなら

過去のものだって 変化してもいいはずだろうしね

ぼくのあわれな渡り鳥よ 飛んで行くんだ

神がおまえを しかるべき棲み処に導いてくださるように!

 

ぼくのものを読むきみが だれであれ

できるかぎりの読みかたを しておくれ

ぜんぶを読み終えるまでは 批難も控えていておくれ

 

最初の詩編たちは 子供の手になるもので

ふたつ目は 青年の手になるもの

最後のが どうにかこうにか 大人になるかならぬかの者の作だから

 

1840年






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