上野にいる夕方なのだから
なにか
食べていこう
ということになり
連れの発案で
トンカツの蓬莱屋に行くことになった
行ったことがなかったし
小津安二郎のなじみの店だということで
一度行っておくのも
よかった
ヒレカツしか出さない店で
ロースカツはない
トンカツ屋に行く時
わたしは
いま
ロースカツしか食べないが
ヒレカツばかり食べていた時期も
あった
『お茶漬けの味』とか
『秋刀魚の味』ならぬ
ヒレカツの味か
そんなことを思いながら
ヒレカツ
キャベツ
御飯
香の物
味噌汁
をあわせた
ヒレカツ定食を
食べる
シンプルなものだ
うまかった
トンカツを食べる時
いつからか
ソースはかけなくなった
うまいトンカツは
なにもかけず
そのままで
うまく食べられる
蓬莱屋でも
そうした
三種類の塩も出してくれたので
それも試した
スリランカの岩塩
藻塩
フランスの岩塩
それぞれ
味や
塩味のあらわれ方が違って
おもしろかった
フランスの岩塩は
奥ゆかしいというのか
口に含んで
すこし経ってから塩味が感じられてくるのが
特におもしろかった
靴を脱いで
二階に上がり
座敷で食べたが
あぐらをかいて長々と食べるのも
いまの時代の人間としては
ちょっと
疲れるところがある
ダラッと背を曲げてしまえば
まだ楽だが
料理屋でそんな格好をするのは
やはり憚られる
途中で
正座してみたが
こちらのほうが楽だった
とはいえ
正座も年じゅうするわけではないので
ときどき脚をのばして
痺れてしまわないようにと
気を使う
ビールは
エビスの大瓶を取ったが
うまかった
コーンやスターチが入っていないので
ビールの味が濃い
日本酒は
石川の菊姫を取った
燗はなく
冷やしかないというので
冷やをもらった
菊姫は
トンカツにあう
しっかりした味で
ちょうど
いい
冷やも
よかった
ヒレカツにあわせて
飲ませるのに
あえて
菊姫は冷やを出しているのか
そうかもしれない
正しい判断だと
思えた
0 件のコメント:
コメントを投稿