2023年3月29日水曜日

色もかたちも失いあって



 

桜の花は

青く晴れた満開の頃あいのみに

愛でるべきものかは。

 

いな。

 

そうでもなくて

小雨がちの

夜の入りなどにも

あかりを受けたりしていれば

趣の勝る

ものにして。

 

あかりのない

暗がりの

夜もさらに更けて

いっそう暗いあたりに

白いのか

うす桃いろなのか

もう色もさだかならぬさまとなって

わたしひとり

桜とだけ

色もかたちも失いあって

雨降り続く

闇の一部となって

しばらく

音もなく

息も抑えて

ともにあり続けるこそ

かぎりもなく

あわれなれ





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