2023年3月14日火曜日

「エチオピア」のカレーの味


 

まだ夕方ではないが

午後も遅くなって

なにか食べておきたいと感じたりする時には

けっこう悩む

昼食を食べてある場合は

そのまま

なにも食べずに夕食を待つのが正解だろうが

昼食を食べておらず

夜の9時や10時頃の夕食まで

なにも食べないでいる

というのも

ちょっと間が空きすぎる

 

それで

たまたま神保町に居たりすると

カレーでも食べるか

となってくる

 

カレーはどこでも食べられるし

ただスプーンで掬いながら食べるだけの

簡単このうえない食べ物だが

いろいろな店がある神保町でカレーを食べるとなると

どんなカレーにするか

どの店にするか

あれこれ考えはじめて

選択は簡単ではなくなってくる

食べてしまえば

どの店のどんなカレーでも

たいして変わらなかった気がするはずなのに

食べる前や

店を選ぶ前には

ちょっとアタマは忙しくなってしまう

 

どうしようかなあ

と迷い続けながら歩くのも

道すがら

あれこれの古本屋を見ながら行くことになるので

けっこう楽しい

そんな時に見つけて買った本もいっぱいあって

古本屋の店先あたりだけ冷やかしながら行くのでなく

店の奥にまで入って行って見はじめた結果

とっぷりと日も暮れて

午後遅い軽食などすっかり食べ損ねて

本ばかりトートバックに何冊も入れてすっかり重くなって

腹だけはやっぱり空いているものだから

しかたなしにコンビニでパンを買って

歩きながら食べて済ますようなこともあった

 

今日はすぐに手に入れたい本もあまりなく

もし見つかれば岩波新書の『日本の税金』(三木義一)や

近藤秀将『アインが見た、碧い空。あなたの知らないベトナム技能実習生の物語』(学而図書)を買いたいとは思ったが

文庫クセジュの『ヨーロッパとゲルマン部族国家』(マガリ・クメール+ブリュノ・デュメジル、大月康広+小澤雄太郎訳)を手に入れたばかりでもあるので

それほど古本屋に引っかからなかった

いくつかの本屋はのぞいてみたが

どこでも見つかりそうな岩波新書の目当ての本が

こういう時には見つからなかったりする

文庫の川村を覗いてみても『日本の税金』はなかった

なかったがあらためて岩波新書の並んでいるのをつぶさに見てみる

「日本の」と冠したタイトルがなんと多いことかと

ちょっと驚いてしまう

 

文庫の川村まで来れば

有名なカレー屋の「エチオピア」*はすぐそこである

ここのカレーは

個人的には

すごくうまいという感じではないのだが

もちろんうまくないわけではなく

各種のスパイスを薬のようにしっかり摂取したいという時には

おそらくいちばんのカレー屋だろうと思う

妙な混ぜ物を入れずにスパイスと具材だけで作るのは

カレーの本道といえる

 

ということで

「エチオピア」に入ってしまう

ビーフ+野菜カリーにして

0から70倍まである辛さ選択では2にしてもらった

0が一般的な中辛にあたり

3が辛口にあたるので

ちょっと辛めという程度

以前入った時には

若い女性が食券を店員に渡しながら

おもむろに「27倍」と告げるのを聞いて

辛いもの好きというのは恐ろしい人たちだと思ったが

ここに入ってくる客たちの中には

静かなたたずまいをしていても

並みの人間たちではない人たちも多いので

席に着く時にはちょっと緊張してしまう

 

とはいえ

注文を受けてから

ゼロから作りはじめるので

カレーが出て来るまでは10分ほどはかかる

その間

茹でたポテトが先に出されてくるのを食べてみたり

本を読んでみたりして待っていると

他のカレー屋では経験できないようなのんびり感を味わえる

料理がサッと出てこないというのも

今の時代にあっては逆に貴重な気もする

たかが一皿のカレーであっても

それを待っているあいだに

いろいろ考えたり

店内のあれこれを見てみたり

往来を行く人たちをぼんやり眺めてみたり

また本に目を転じて

読み出してみたりする

 

カレーが出てくるのを待ったり

出てきたカレーを食べたり

食べ終わってちょっと一息ついたりしていると

「エチオピア」では

30分から40分はふつうに座り続けていることになる

混んでいなければ

スマホを見たり

本を読んだりしながら

1時間近くは座っていても文句は言われない

アイスクリームなどのデザートもあるから

それを追加して食べる人も出てくる

もともとエチオピアコーヒーとカレーの店としてオープンしたので

コーヒー店の雰囲気が残っているのかもしれない

 

「エチオピア」の店内には

店のカレーにどんなスパイス類が入っているか

書かれた紙がところどころに貼ってある

それを見ながら食べることになるからか

食べ終えると

カレーを食べたというより

滋養強壮になるスパイス類をしっかり摂った

という気持ちになる

 

これが

ここのカレーの

いちばんの特徴である気がするし

体調を整えるために

からだは時どきスパイスをごっそり要求するものなので

他のカレー屋に行くよりは

どうせならここへ

という気に

なってしまう理由でもある





*https://haraheri.net/article/1152/jinbocho_ethiopia







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