2023年3月24日金曜日

信号灯たちのリレー

 


急げば渡れたはずだが

疲れてもおらず

物憂げになっているわけでもなく

からだに鈍重さが染みているのでもないのに

歩行者用の信号灯が点滅しているのを見ながら

なんとなしに

横断歩道を渡らないことにした

 

大きな通りで

夜の入り

歩けば15分ほどかかりそうな

遠く

むこうの方まで見通せる

 

車用の信号が

間隔をおいて遠ざかって並んでいるのが見える

まだ浅い夜だが

じゅうぶん暗くなったので

信号の青いひかりがあざやかに見える

四つほどの信号灯が

順々に小さく遠ざかりつつ立っているのが見える

 

都会の繁華な

忙しない情景の中で

ひかりと色が作り出すこうした幻は

美しい

 

しばらくして

車用の信号が変わり出す時が来た

安定した青色を灯していた

いちばん遠くに小さく見える信号灯が

青から黄に変わった

 

ほんの少し遅れて

それよりもこちら側にある

次に遠い信号灯が

青から黄に変わった

 

それから

ごくわずかに遅れて

さらに近い信号灯が黄へ

 

すぐ続けて

わたしが立ち止まって待っている

この交差点の信号機も

青から黄へ

 

距離を置いた

これら

四つの信号灯の色の変化のリレーは

わたしだけ

気づくことを許された

新たな世界の開示であるかのように見えた

 

この交差点で

距離を置いた複数の信号灯の

こうした変化のリレーをしっかり見たことは

なかった

 

他所では

こうした光景を見たことは

わずかながら

ある

 

しかし

長いこと

見ないでいてしまって

いた

 

なんと長いこと

見ないでいてしまって

いたことか…

わたしは

このところの

わたしの生と生き方に欠落していたものを

認識し直した

 

そして

思ったものだ

 

そうか

このために

さっき

わたしを深くから導くものが

あえて

横断歩道を

渡らないように選ばせたわけか





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