広瀬川白く流れたり
時さればみな幻想は消えゆかん。
われの生涯(らいふ)を釣らんとして
過去の日川辺に糸をたれしが
ああかの幸福は遠きにすぎさり
ちひさき魚は眼にもとまらず。
萩原朔太郎「広瀬川」
たゞシンプルに本性を生きていく
ということが
社会という檻の中では
どんなにむつかしいことか
わたくしはたゞ日本語で
思うこと
思わないこと
書きつけをして
紙に印刷して楽しんでみたり
ネットに載せて楽しんでみたり
ほんとうにごく稀に
友に見せてみたり
そんなことを幼稚園に入る前から
やってきているけれど
たったこれだけのことをし続けるのさえ
やれ詩歌だなんだ
やれ文学がなんだ
やれ人に伝わる表現がなんだ
やれ前衛がなんだ
やれ品格のある表現がなんだ
なんだかんだ
かんだなんだと
時分時分にすれ違った人たちは
言い募ってきた
時間が経って誰もが消えていくと
きまって残るのはいつも
思うこと
思わないこと
たゞ日本語で書きつけて
楽しんでいるわたくし
わたくしのために
わたくしが
わたくしに書きつける
ことば遊びをしているわたくし
まるで親のいないあいだの子
まだ夕食の準備に間のある食卓で
紙にむかって文字を書いたり
消したりまた書いたり
ちょうど立原道造がやったように
単語ごとに色分けして
カラフルな言葉並べのようなものを
気まぐれに拵えてみたり
そうしてしばらくしたら
惜しげもなく
ゴミ箱に捨てて
外の小川や原っぱに
虫やカエルを捕まえに行ったり
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