とても悪いものが近づいている
もう心と思いの土壌はできているからそれに呼ばれて
とても悪いものが近づいている
いま成人していない子らも
血を地に注ぐために生贄としてのみ生れてきている
これから時期悪しく生れる子らも
肉を大地の肥やしにするためにのみ生れてきている
人間をなにか特別な敬われるべきものであるかのように
他の生物たち無生物たちが思っていつまでも黙っているとでも思うのか
誤り続けた者たちの連鎖の裔の若者たちの手足はもがれ内臓は噴き出て
大地と海を聖別するため新たにするために使われる
まだ正気を保っているかのような人びとの精神からも
少しずつネジや歯車が引き抜かれ
人間の生や社会を深く激しく蝕むよう後戻りできぬかたちで働いていく
近づいてきている悪いものは
一度や二度の大爆発のように目を引くものではなく
疫病のようにじわじわとゆっくり人間たちの体内に体外に広がる
それはどのように現われるか
それはどのように現われるか
無関心として
見て見ぬふりとして
心の視界狭窄として
いっそうの感情の抑制として
ほうぼうで弱ったものがただ萎れていく静けさとして
時分の勢いの側に動物的に身を擦り寄せる大勢の者たちの臭いとして
健康と自負していた者のからだに染み込む透明の甘苦い汁のようなものとして
いまの時代に生きているものが誰も堪えぬいていけないほどの
想像を絶した長さの心と神経の汚泥の時代のひたひたと寄せるさざ波として
持たざるものが持つものを容赦なく消滅されることからしか
既にあるものの情け無用の排除からしか
もはや風穴は開きようもなく
それだけがとても悪いものをもっと悪くないものに
かろうじて変え得る
さもなければ
とても悪いものが近づいてくる
もう心と思いの土壌はできているからそれに呼ばれて
とても悪いものが近づいてくる