2023年7月31日月曜日

過去へと生まれてそこで役割を担う

 

 

 

       因果一如

       白隠

 

 

 

ある程度の年齢をこえると

だれの生も

次に生まれ変わってくる来世にとっての

前世になる

 

そう考えると

歳をとってきたから

あとはもうどうでもよい

適当に楽しんで

生き続けられるところまで行くさ

とも言っていられなくなる

 

来ては去っていく

日々のひとつひとつが

前世の最後のほうの日々だとすれば

むしろ逆に

よほど真剣に

注意深く

繊細に生きておかないと

来世はたぶん

ろくなことにならない

 

なかなか克服できなかったことは

少しでも乗り越えるように努め

細かな掃除や

生活全般のあれこれも

貴重な修行として大事に行ない

身につかなかった勉強なども

ちょっとでも基礎固めをし直しておきたい

そうでないと

来世の通信簿に赤点が並びかねない

 

思い出されるのは

眠れる預言者と呼ばれた

エドガー・ケイシーの挿話のひとつだ

 

ケイシーはある人物に相談を受けたが

ふつうの勤め人であるその人は

なぜだかアメリカ建国の頃のことに

あまりに猛烈な興味があって

調べたり学び続けていた

将来学者になるつもりも可能性もなく

本を書こうという思いさえない

ただとにかくアメリカ建国のあれこれが知りたい

あらゆる観点からの観察や調査に

熾烈な関心が湧き続けて抑えられない

彼はケイシーにどうしたらいいか?

いくら調べたり学んだところで

この人生ではどうにもならないはずだし

ただ読書やメモに時間を費やすばかりで

もっと他のこともいろいろとやって

人生を豊かに楽しむようにすべきではないか

そう思うのだがどうしようもないのです

と悩みを打ち明けたのだった

 

ケイシーの答えがおもしろかった

今のままどんどん調べ続け学び続けなさい

なぜならあなたは次の人生で

アメリカ建国の時代に生まれることになり

極めて重大な役割を演じるはずだからです

 

その人は驚いてケイシーを見つめ

なにをおっしゃるんです?

アメリカ建国の時代は過去の時代ですよ

過去へと生まれるはずはないし

もうすべては終わってしまっているじゃないですか?

建国の結果としての現代があり

わたしもあなたもここにいるではないですか?

そう聞き返した

 

ケイシーはそれを否定して

いいえ過去へと生まれて

そこで役割を担うということがあるのです

なかなかわかりづらいかもしれませんが

現代に生きているこのあなたが

いろいろと今学んでいることを携えて

アメリカ建国の時代へと生まれることで

じつははじめてアメリカ建国が可能となるのです

アメリカ建国はあなたに掛かっており

あなたが今学んでいる多くのことに掛かっているのです

あなたが調べたり学んだりしないと

アメリカは建国されないのですよ

と伝えた

 

ふつうの時間概念を完全に覆す

こうしたケイシーの理論はなかなか実感できないが

霊能者の見地からはありふれたことであった

 

だから湧き上がってくる熾烈な興味に従って

どんどん建国の時代のことを学びなさい

本一冊さえ書き残さないでいいから

学んだあらゆることを魂に刻んで

アメリカの建国を引き起こすように努めなさい

あなたがやらないとこの現代のわたしたちも

存在できなくなってしまうのです

ここのところはわかりづらいでしょうが

そういうふうに出来ているのです

歴史の重要な礎石のひとつがあなたなのです

 

ケイシーはこう言って

この人の学びを励ました

ということは

ケイシーが励まし

その人の生涯を掛けた学びを遂行させたからこそ

アメリカは建国された

ということでもある

 

 




朝顔の道は朝

 

 

 

下谷の朝顔祭りに

ある晩

出かけて行って

茎の太い朝顔を一鉢買ってきたが

あんまりぎしぎし

柵に巻きつけてあって

はじめのうち

奥のほうでいくつか咲いたが

その後

あまり咲かなくなった

蕾はあるので

もう少しすれば咲くだろうが

こんなぎしぎしの巻きつけかたでは

咲いたって

花もちゃんと開けないだろう

 

ということで

暑い日中

一念発起して

柵からいったん解いて

大きめな鉢に植替え

もう一度

うちにあったもっと広い柵に

絡め直して

だいぶ蔓をのんびりさせた

 

こういうふうにすると

植物は

ちょっと様子を見るような感じで

しばらく静かになってしまう

新しいこの環境で

やっていけるかなと得心すると

また蔓を伸ばしはじめたりする

あちこち伸びてきたので

そろそろ落ち着いてきたのだろう

 

下谷に住んでいる女性カメラマンに

妻はたまたま仕事で出会って

このあいだ朝顔祭りに行って買ってきたけれど

思ったほど咲かない

と言ったら

「夜に行って買ったでしょ?」

「おじいさんに騙されて買ったでしょ?」

と言われたそうな

おじいさんには騙されなかったが

おばさんに騙されて

買ったことになるかもしれないし

夜に行ったのはまさにその通り

と答えると

「夜の朝顔はダメなのよ

朝はやく行って買わないと

いい朝顔はみんな売れちゃうの」

と教えられたという

朝は五時からやっていて

その頃に行って買わないと

いい朝顔は手に入らないそうだ

 

それを聞いて

蛇の道は蛇というが

朝顔の道は朝なんだな

と学んだ次第

 

しかし

朝顔祭りだからって言っても

下谷に朝五時に着くっていうのも

なんだか

なァ

 





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結局

だれもが

「わたし」とか

「じぶん」とか

発語してなんとか作文し続けようとするが

「わたし」や

「じぶん」以外の単語は

どれもみな

三人称

よそもの

じつは

どこの誰のものでもいい

単語ならべ

 

おお、ことばなるものの本源的かつ宿命的なむなしさよ

 

「わたし」だの

「じぶん」だのだって

あなた以外の誰が発語して使用したっていい

完全なコンビニ商品

 

あなたの「わたし」の裏を見てごらん

あなたの「じぶん」の端っこを見てごらん

 

付いてるよ

きっと

 

バーコード






日焼けのあとで皮膚が剥けるのも

 

 

夜も

日中も

ベランダの窓をあけっぱなし

 

玄関だって

風が通るように

ドアストッパーで

ほそく

開け続けている

 

だから

けっこう

蚊が入ってくる

見えに見えないダニみたいなのも

出入り自由

 

なので

手とか足とか

いつのまにか

刺されちゃうんだよね

 

22階だというのに

虫ってのは

なかなかどうして

根性がある

 

痒いなあ

と掻いていたら

子どもの頃を思い出した

 

夏といえば

いつも

肌が汚かった

 

日焼けして

そのうち

皮膚が乾いてこぼれてくるので

いつも

肌が

ぼろぼろだったのだ

 

治ったかと思うと

また

炎天下に虫取りに出るので

日焼け

 

海にも泳ぎに行くので

日焼け

 

9月になって

服なんかちゃんと着ちゃって

学校に行って

陽光にじかに当たらなくなってから

ようやく

肌はもとに戻りはじめる

 

日焼けのあとで

皮膚が剥けるのも

痒かったなあ

 

痒くなくなると

一年のいちばんいいもの

すべてが

終わっていったんだ

とわかり

さびしかったなあ






わたし

 

 

わたし

たとえば書く

言う

 

すっごい

ウソだ

 

生活の中で

わたし

なんて使わない

ほとんど

 

わたし

って

仮面だ

 

その証拠に

あなたも

すぐ

使える

 

ほら

あなたにあげる

 

かぶってごらん

なにか

言ってごらん





この世にすこし恨み残るは

 

 

 

本人だけにしかわからない回路で人生を生きていく

吉本ばなな『パイナップリン』

 

 

 

 

暑い暑いといいながら

ほんとに汗まみれになりながら

7月の終わり頃なんて

毎日のように飲みに行ったよね

と言う

 

クーラーの効いた店で

ビールをいっぱい飲んでも

店の外に出ると暑いもんだから

涼しさも酔いもいっぺんに消えちゃって

また汗だらけになってきてさ

と言う

 

歌舞伎町で朝まで飲むと

始発を待つまで居るところといったら

どっかのラブホじゃなくって

マクドナルドとか

ミスタードーナッツで

もうコーヒーとかは飲みたくなくって

それでもドーナツなんかは

けっこう食べられるので

不思議なもんだと思ったよなあ

と言う

 

渋谷での朝帰りは

けっこう居酒屋で迎えたかな

みんなテーブルに俯したり

ソファーにのけぞって

もう話もろくにできなくてさ

誰かがなにかひと言ふた言いうと

ううんとかあああんとか

音だけ出して目を閉じてるんだみんな

という

 

ちょっと遠いところまで

歩いて飲みに行ってみよう

帰りも歩いて戻るぞ

なんて誰ともなしに言い出して

なんとなく付いていって

せっかく涼しく飲んだのに

40分ぐらい歩いて

東京を横断して帰ってくるもんだから

都心に来たらもう汗だらけでさ

と言う

 

納涼企画のお話会とか

オールナイト怪談映画とか

見に行ったのはいいけど

2時半をまわるとさすがに疲れちゃって

これって歳とったらムリだよな

なんて言いながら

なんとか五時頃まで

けっこう何度も

頑張ったんだよな

と言う

 

週にふたりか三人ぐらいは

女の子たちと飲んだな

でもちゃんと

11時半頃には帰らせるんだ

その酒は強すぎるとか

こっちのほうがうまいかもとか

そんな指導っぽいことして

飲んだり食べたりしてるうちに

こっちのほうが疲れてくる

ふらふらになってくる子もいたけど

夏の夜の酔っ払った女の子の

汗まみれの肌になんか

あまり触りたくなくって

9時半頃からは終わらせモードに入り

ほら、水いっぱい飲んで!

ほら、終電になっちゃうから!

とか言ってシャキッとさせて

なんとか送り返したものだった

と言う

 

そうさなあ

酔った女の子はお持ち帰りとか

そういうのって

ふつうに多いわけじゃないと思うんだよ

だって

魅力ないぜ

酔ってフラフラしてる汗だらけの子って

飲み食いしたものの臭いが

胃から洩れてくるしさ

髪の毛だって

いくら香りの強いリンスしてたって

もう夜中には汗臭いだけ

と言う

 

それにさ

それまでさほど知らなかった子と

朝までホテルに居たら

こっちは髭は生えるし

酒で疲れた顔は朝にはまだ戻らないし

そんなとこ見せたくないしね

と言う

 

そういうの

あるよね

妻とか同棲相手じゃなきゃ

そこまでは見せられませんっていうとこ

あるよね

だからおれは

しかたなくホテル行っちゃった時は

相手が寝込んだ時に

ひとりだけ先に抜け出したものさ

寝乱れた頭や疲れた顔を

朝に見せたくないから

小心者だけど

先に失礼させてもらいます

よく寝て

ゆっくりしててね

なんてメモを残して

ホテルのフロントには

寝入っているから

もっと寝させておきます

心配ないですから

とちゃんと顔を見せて言って

そうして出て行くのさ

まだ5時にもならないうちにね

と言う

 

この世に

すこし恨み残るは

わろきわざ

となん

聞く

(『源氏物語』・夕顔)

と言う







国連まで

  


地球が温暖化して

ひとが生きられなくなるほどに

なっていく

必死で言っている

そこらのマスコミばかりか

国連まで

 

7月19日には

南アメリカで過去最大級の寒さを記録し

7月26日には

ヨーロッパで災害級の寒さを記録し

アルゼンチンで極寒を記録し

南極でもー83.2度を記録し

オーストリアで真夏に雪が降った

というのに

必死で言わないようにしている

そこらのマスコミばかりか

国連まで