2014年9月9日火曜日

誰もいない朝




電池の切れた点滅灯も
ラヴレターも
思い出しもしない
静かな朝

ティーカップに
水を入れて
大きな庭のむこう
苔蒸した大理石の手すりまで

やはり
行かないで

崩れかけた
近くのアポロンの彫像の
わきのテーブルに
死んでいる
玉虫をつつきながら

あゝ
こんなに雲が厚いから
今日は
降るかもしれない
出かける用事はないが
降るかもしれない

…思いながら

飲むというより
啜っている
ティーカップの

思い出さない
たくさんのことが
ある
静かな朝

誰もいない





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