遠いむかしが懐かしいというのは
だれにでもあることで
ふつうな感じだが
ぼくなんかは
つい数年前のことがぜんぶ
もう
懐かしくてたまらない
引っ越したといっても
おなじ東京都内なものだから
懐かしい
懐かしい
と思いながら
ちょっと行ってこようと思えば
行けてしまう
で
時間がちょっとある時なんかに
ちっちゃな覚悟をして
ちょいと行ってみたりする
行ってみると
住んでいた頃とは
なんやかや
いろいろと変化してしまっていて
かつて住んであんなに馴染んだりうんざりもした場所だというのに
もうそこに居てみても
なんやかや
いろいろ変化してしまっているから
懐かしさのど真ん中に浸ってはいられない
懐かしさの淵源は遠くに行ってしまっていて
タイムマシンでもなければ
もう手が届かない
そんなこんななものだから
故郷喪失をまた新たにこころに重ねながら
よく知っている電車に乗って
いまの住まいのほうへと帰ってくる
おなじ東京都内だというのに
もう二度と戻ってこない風景がまた増えたのを痛んで
すっかり失われてしまったものを
記憶のなかでなんども蘇らせようとしながら
おなじ東京都内なものだから
ほんの数十分で
いま住んでいるところに帰り着いて
バッグを置き
部屋着に着替えたりしている
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