冬の
本格的な寒さが近づいてくると
むかし
暖かい部屋にいた冬の日が
思い出されてくる
子どもの頃
少年の頃
まだ
家の平和が失われていなくて
学校も終わって
冬休みに入った日
親は出かけて
ひとりで静かに炬燵に入って
おきまりの
蜜柑だの
お茶だの
近くに置いて
飽きもせず
本を読み続けている
その先に
どんなに辛い波乱が待ち受けているか
まだ思いもせず
いつまでも
こんな閑雅な読書を続けていけるかのような
じぶんの受けた生に
ずいぶん
根拠のない信頼などよせて
ときどきは
剥いた蜜柑の皮から
汁をページに飛ばしたりしながら
ひょっとして
風など強まったりしていないかと
窓の外に目をやったりもして
まるで
つかのまの人生の避難所の窓から
やがて始まる
生の暴風雨のきざしを
感じとろうとでも
するように
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